ポーランド:紛争から避難した子どもたちのための心理社会的ケア
2022年11月2日 ポーランド発
2022年11月2日 ポーランド発
タヴィタさんは、ウクライナの紛争からポーランドに逃れてきた家族にすぐに支援と情報を提供することの重要性を十分理解しています。ウクライナ出身のタヴィタさんは、数年前からポーランドで暮らしています。今年5月からUNICEFとUNHCRが共同で運営する支援拠点「ブルードット」で働き始め、多くの難民の家族に出会い、支援してきました。
長く、時に困難な旅を乗り越え、人々は混乱した状態で辿り着きます。特に子どものいる難民にとって、新しい国で新しい生活を始めることは、不安で圧倒される日々です。親たちはどこで助けを得ることができ、どうすれば子どもたちが十分な栄養を摂って健康な生活を送り、教育を受けることができるのかを知る必要があります。
ブルードットでは、たどり着いた難民が休みをとり、子どもたちが「子どもにやさしい空間」でアクティビティや遊びを楽しみ、親たちはその後の旅や暮らしの役に立つ情報や支援を得ることができます。

ウクライナの一部で紛争が激化した10月11日の翌日、タヴィタさんをはじめとするUNICEFのブルードットのスタッフとコーディネーター7人は、プシェミシル駅に仮設のブルードットを設置し、ウクライナとポーランドとの国境付近で高まるニーズに対応しました。
「電車で来る人が多くいます。プシェミシル駅には、ウクライナの様々な都市から1日に4本の列車がやってきます。そのすべてが満席です。その後の計画を立ててから来る人もいますが、多くの家族は、次に何をすべきかを見極める、多くのサポートを必要としています。このような状況で、私たちが提供する情報は非常に重要となります。」(タヴィタさん)
その間にも、一本の列車が到着しました。到着ゲートに人が集まり始めると、ぜい弱な家族を特定する訓練を受けたタヴィタさんが、すぐに若い母親のクセニーアさんと幼いミーシャくんに目を向けました。列車から降りた途端、二人は泣き出してしまいました。シアンブルーのUNICEFのベストを身に着けたタヴィタさんは、クセニーアさんのもとに近づき、何かサポートできることはないか尋ねました。
クセニーアさんはウクライナ東部のルハンシク州の出身ですが、紛争が始まり、夫と一緒にザポリージャに移りました。3歳の息子のミーシャくんが爆撃を目にしたり、サイレンを聞いたり、シェルターに避難したりする必要がないことを願っていましたが、現実は異なるものでした。紛争が再び激化し、一家はミーシャくんと母親がウクライナに滞在するのは安全ではないと判断しました。

クセニーアさんは無事ポーランドにたどり着くことができて安心したものの、ウクライナに残してきた両親や夫のことが気がかりだと言います。「こうするしかありませんでした。とても怖かったです。息子のミーシャの安全を第一に考えると、ウクライナに留まることはできませんでした。」クセニーアさんがミーシャをくん抱きながら話します。「夫は一緒に来ることができませんでした。彼は仕事を失って家族を養うことができなくなることを恐れて、ウクライナ西部に行くことすらできません。」

タヴィタさんはブルードットのスタッフが子どもたちのために作ったおもちゃの飛行機を1つ手に取り、ミーシャくんに渡しました。その瞬間、幼いミーシャくんはすべてのことを忘れ、パイロットとなって飛行機を操縦し始めました。

24時間の列車の移動で疲れ果てているにもかかわらず、クセニーアさんは息子のために力を振り絞ります。しかし、彼らの旅はここで終わりではありません。タヴィタさんはミーシャくんの手を引いて駅に一緒に向かい、これからの旅に必要な切符の購入を手助けします。

気温が下がってきているにもかかわらず、タヴィタさんは毎日、同僚と一緒にウクライナから避難してくる人々を外で待ち、社会福祉サービスや保護を必要とする最もぜい弱な立場にある家族や子どもたちを特定するために活動しています。ブルードットで働くすべてのスタッフが、即座に支援を提供し、必要に応じて家族に関連サービスを紹介できるよう訓練を受けています。状況や言語を理解する彼らが献身的にサポートすることで、クセニーアさんやミーシャくんのような難民の人々は安心すことができるのです。
「お母さん、タヴィタさん、大好きだよ。」ミーシャくんが、母親とブルードットのスタッフと一緒に切符を買う列に並びながら話しました。
クセニーアさんは、必要な休息をとることができるブルードットの安全な空間でゲームをして遊び、笑うミーシャくんを微笑ましく見つめています。

UNICEFとUNHCRが共同で運営する支援拠点「ブルードット」は、ウクライナの紛争から避難するあらゆる国籍の人々に、安全な空間や支援、情報、サービスを提供しています。
これらのポーランドにおけるウクライナ難民の子どもや家族に対する支援は、日本政府からの資金援助で実施されました。
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