マリ:希望がちりばめられた道のり
2024年3月27日 マリ発
2024年3月27日 マリ発
メナカ州のコングレス砂丘にある避難民施設で、今日も日が昇ろうとしています。この施設には、3,384人が暮らしており、その内の43パーセントが子どもたちです。目を覚まし始めた子どもたちの遊び、笑う声が、穏やかな夜明けの静寂を破ります。この長閑な光景を目にすると、この幼い子どもたちの心に長年の紛争の傷が深く刻まれていることを忘れてしまいそうになります。
複雑な人道危機の影響を受けるこのコミュニティの中心部に、色鮮やかで居心地の良い、「子どもにやさしい空間」が設置されています。心理社会的支援を専門とする心理学者のモッサ・アグさん*の一日は、この場所から始まります。彼は、髪の毛を覆うスカーフを丁寧に整えて、子どもにやさしい空間に入っていきます。
モッサさんは、日々が挑戦だと言います。この子どもにやさしい空間では、子どもたちが紛争や身近な人の喪失、育児放棄などのトラウマを克服する手助けをするための心理社会的支援の一環として、モッサさんと彼の3人のチームがアクティビティを行っています。これらの活動は、グループで行うゲームやお絵描き、音楽、ダンス、演劇などの多くの創造的なアクティビティを通じて、子どもたちが日常と安心感を取り戻すことができるようにするために行われています。
お絵描きの時間、モッサさんは無表情な12歳の少女、アガイチャトゥさん*に声を掛けました。アガイチャトゥさんの絵にはよく、言葉では言い表せないことが描かれています。モッサさんは彼女の絵を通して、少女の不安な気持ちや希望を感じ取っていきます。モッサさんはアガイチャトゥさんの近くに座って優しく話しかけ、彼女が自分の経験を言葉にできるように支えます。
「オートバイに乗って武装した男の人たちが私の家に火をつけ、家にあったものをすべて奪っていきました。この絵は、その時に私たち家族が経験した苦しみを描いたものです。すぐ隣の村の人たちは、その集団に殴られ、亡くなりました。この襲撃の後、母はロバに私と兄弟を乗せて村から逃げました。何か変な音がする度に、その時のことを思い出します。」と、アガイチャトゥさんが話します。
この日彼女が描いた絵は、暗い色合いで、雑然とした形が混在しています。モッサさんは、この絵は彼女の中の混沌した気持ちの表れであり、誰かに耳を傾けてもらい、理解され、寄り添ってほしいという心の叫びが表れているといいます。
グループでの活動と同時に、メンタルヘルスや心理社会的支援の質の高い個別支援も行われています。モッサさんは特定のニーズを持つ女の子や男の子たちに寄り添い、アドバイスをします。個別支援では、より複雑で根深い問題に対応することができます。一人ひとりに合ったカウンセリングを行うことで、その子どもが自由に自分のことを表現し、徐々に過去を乗り越えられるようにするための信頼を築いていきます。
「私たちの活動は、まず危機の影響を受けた子どもたちに手を差し伸べることから始まります。そして、子どもたちが自分が抱える問題を話せる環境を整え、総合的な支援を行います。さまざまなレベルで子どもたちに影響を与える、殺害や誘拐、性的暴力を含む、武装集団による攻撃や暴力、爆発物による攻撃によるトラウマの事例が見られます。複雑な仕事ですが、危機の影響を受ける多くの子どもたちが笑顔とより良い生活への希望を取り戻すための力になれることを嬉しく思います。」(モッサ・アグさん)
トラウマからの回復には、時間がかかります。すぐに乗り越えられる子どももいれば、根気強く数カ月間支援を受ける子どももいます。しかしモッサさんは、子どもたちが笑顔を取り戻す度に、恐怖を克服する度に、そして彼らと笑い合う度に、活動の効果が目に見える形で証明されているということを知っています。
一日が終わって子どもたちが家族の元に戻ると、モッサさんは他のスタッフとその日の活動の報告を行い、その日に気づいたことや懸念事項、成功事例を共有し合います。そして、常に子どもたちにそれぞれの具体的なニーズに合った支援を行うことができるよう、翌日の活動の計画を立てます。
日本政府の支援のもと、UNICEFは政府やパートナーNGOと緊密に協力し、メナカ州にこのような移動式の子どもにやさしい空間を6カ所設置し、3カ所の常設の子どもにやさしい空間を修復して設備を整えました。これらの場所で、503人の女の子を含む968人の紛争の影響を受けた子どもたちが、コミュニティや集団による心理社会的支援を受けています。
依然として多くの課題が残りますが、モッサさんや彼のチームの決意は揺るぎません。「どのような傷を抱えていようと、すべての子どもたちに平和や喜びを感じる権利がある」という確固たる信念が、彼らの活動を支えています。
※個人情報保護のため、名前は仮名です。
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