シリア:紛争で両親を失い、障がいを負った男の子、支援を受けて再び歩み始める
2022年9月12日 ダマスカス郊外(シリア)発
2022年9月12日 ダマスカス郊外(シリア)発
レイスくんが紛争で両親を失ったのは、わずか2歳のときでした。2012年、ダマスカス郊外のザモカで暴力が激化し、レイスくんの家族は鞄に服だけを詰めて自宅から避難しました。数日後、家族は避難先のダマスカスで2人の息子たちが学校に入学するために必要な持ち物や書類を取りに、ザモカの自宅に帰りました。
「私たちは地面に投げ出され、ほこりに埋もれました。」レイスくんの祖母のラウダさんが、悲しい出来事を思い出しながら話します。「なんとか立ち上がって、娘や義理の息子、孫の安全を確認しようと、バルコニーに駆け寄りました。」爆弾が自宅に落ち、三人とも瓦礫の下敷きになっていました。ラウダさんはレイスくんをなんとか助け出すことができましたが、レイスくんと両親は重傷を負いました。三人は病院に運ばれましたが、両親は病院で亡くなりました。レイスくんは1カ月間昏睡状態に陥り、 医師は彼の右足を切断するという決断を下さなくてはいけませんでした。「それからレイスは10回手術を受けましたが、まだ手術をしなくてはいけません。」と、ラウダさんが話します。
12歳になったレイスくんは現在、祖母と一緒に暮らしています。祖父母は、三人の孫の教育を支えてきました。祖父は毎日、レイスくんの車椅子を押して学校に通いました。「学校は、レイスがよりよい人生を送るための唯一のチャンスなのです。」と、ラウダさんが話します。
「しかし、容易なことではありませんでした。学校へ行き始めたとき、レイスはやる気も自信も失っていました。学校でいじめられたことで、状況がさらに悪化してしまいました。」ラウダさんが話します。
ラウダさんは家賃を払い、家計を助けるために昼夜を問わず働きました。「夫と私は財産をすべて失い、ゼロから再出発しなくてはいけませんでした。年齢的にも、それは簡単なことではありませんでした。」と、ラウダさんさんが語ります。5年前に夫が亡くなり、大きな責任が彼女一人の肩にのしかかりました。
昨年、ラウダさんはレイスくんを担当している外科医の一人から、障がいのある子どものいる家族に対するUNICEFの現金給付支援プログラムについて話を聞きました。「2021年7月、UNICEFの支援するチームが私たちのもとを訪問して、話に耳を傾けてくれました。そして、レイスが支援を受けられるように登録してくれたのです。私たちのことを心から気にかけてくれる人がいるんだと感じた出来事でした。」と、ラウダさんが話します。
プログラムの一環として、レイスくんのケースマネージャーであるバトゥールさんが、障がい者カードの取得や社会サービスの利用、祖母のラウダさんがレイスくんの後見人になるための法的文書の手続きをサポートしました。そして、定期的に家族訪問を行ってレイスくんのニーズを確認し、地元の支援団体を紹介して義足を手に入れられるように支援しました。また、レイスくんが自宅の近くで補習授業を受けられるよう、支援機関を紹介しました。彼は今、補習クラスに通い、手術や回復期間中に受けることができなかった教育を取り戻すための学習を受けています。
「最初に自宅を訪問した時から、レイスくんが最も必要としているのは、心理的な支援だと思いました。彼が自信を持てるように、一緒に取り組んできました。」と、バトゥールさんは言います。「車いすから義足に変えたことで、レイスくんのやる気が高まり、学校での勉強にも成果が出るようになりました。多くの教科で優秀な成績を収め、会いに行くたびに喜ばせてくれるんですよ。友達をつくる勇気も出てきたようです。」
レイスくんの家族は、これまでに8回の現金給付支援のうち4回分を受け取りました。「すべて、レイスのために使っています。服や制服、文房具、医薬品、個別レッスンの費用に使ったり、長距離を歩けないので、学校までの交通費に充てています。」と、ラウダさんは言います。ラウダさんは、レイスくんの健康と教育を何よりも大切にしています。「レイスは私の生きる力です。どんなに疲れていても、彼のために立ち上がりますよ。」
「イード(イスラム教のラマダン月及びラマダン明けの祭り)で、おばあちゃんが買ってくれた新しい服を着たんだ。その服を着た僕を見た近所の人たちが、『上品に見えるね』と言ってくれました。おばあちゃんのことが大好きです。」と、レイスくんが話します。彼の将来の夢は、心臓医になることです。おばあちゃんが健康に長生きできるよう、手助けをしてあげたいのです。
2020年以降、2,500人の障がいのある子どもたちが、UNICEFの総合的な社会保護プログラムの恩恵を受けています。このプログラムでは、ダマスカス郊外で重度の障がいを持つ子どもたちに、定期的な現金給付支援とケースマネジメントが提供されています。この支援は、日本政府、カナダ政府、スペイン政府、欧州委員会人道支援、スウェーデン国際開発協力庁、スイス開発協力庁などの支援によって可能となりました。
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