日本政府の支援受け、水源確保に取り組む エチオピア
2017年10月4日 エチオピア発
「日本政府を通して日本の皆様から頂いた資金を使い、UNICEエチオピアは上水設備が整わないエチオピア東部の砂漠地帯で2件の大規模な井戸堀を実施しています。毎年来る乾期と数年毎に起きる干ばつに左右されることなく小さな子どもから女性が安全な水にアクセス出来るような設備を整えていくことは、簡単なことではありません。日本の皆様の支援でこの水プロジェクトを届けられていることに大変感謝致します」。
― UNICEFエチオピア事務所 水・衛生担当官 松橋明裕子

もし、飲料用、料理用、入浴用に毎日使う水を雨水に頼らねばならず、しかも1年のうち8カ月はその水も干上がって泥の水たまりしかなくなると言われたら、どうしますか。
日本に暮らしていると、幸運なことに、水のない生活など想像もつかないことです。けれども悲しいことに、エチオピアの乾燥地域や半乾燥地域では、これがまだ日常生活の現実なのです。
エチオピア東部にあるソマリ州での水不足は、長年にわたる干ばつにより深刻なものとなっています。干ばつによる悪影響を軽減するための鍵は、気候の影響をあまり受けない水源を開発することです。しかし、その一方でソマリ州民の大多数はまだ、限られた季節のみの貯水池に頼っています。ファラ・アブドゥラヒさん (34)は、15キロ離れた村から国内避難民(IDP)となってガシャモのIDPキャンプにやってきた、4人の子どもを持つシングルマザーです。「私がここに来たのは、干ばつが始まって、飼っていた150頭のヤギとヒツジをすべて失ったからよ」とファラは言います。水文地質学的な事情と、投資にお金がかかることが原因で、水・衛生(WASH)のセクターはその地域に深いボアホール(ボーリングをして作る深井戸)を掘るための投資ができませんでした。その一方で、地表にある水源は干ばつからの被害を非常に受けやすく、人々はより大きなリスクにさらされます。「以前はビルカ*から水を持ってきてたの。だけど、雨がまったく降らなかったから、ビルカは全部干上がってしまったわ」。ファラはIDPキャンプに来る前に住んでいた村での生活についてこう話しました。「このIDPキャンプで水を供給してくれる人道支援のおかげで、私たちはかろうじて生きていられるの」。
アフマド・フセイン・ブレラレ (57)はガシャモの町の近くにあるハジ・デレイエという ケベレ(小区域)の年長者の1人です。長くハジ・デレイエに住んでいる彼は、この地域で水がひどく減少していくのを目の当たりにしてきて、こう話しました。「この地域にはボアホールがないんだ。聞いたところによると、一番近いボアホールは78キロメートル離れたところにあって、この広いワレダ(区域)でそれが唯一の飲料水源だそうだ。ここにあるのは、ビルカのような限られた季節のみの水源だけ。ここ2回の雨季は雨があまり降らなかったから、ビルカに残った利用できる水の量はかなり減ってしまった。みんな心配しているんだ」

ファラとその子どもたちのような女性や子どもたちに飲料水を提供するため、UNICEFエチオピア事務所は2017年8月から、日本政府の緊急無償資金協力を受けて、民間のパートナー団体とガシャモの町の近くに新しいボアホールを掘削し始めました。掘削場所は、ソマリ州水資源局と密接に協力して、人工衛星から得た水文地質学的データを用いて慎重に決められました。人工衛星のデータによると、帯水層が見つかると推定された深度はおよそ500―600メートル。今までのところ、計画された深度の四分の一まで達成されています。この地域にはほかに安全で確かな水源の選択肢がないため、この新しいボアホールは「砂漠のオアシス」となります。この掘削作業はUNICEFの緊急事業の1つですが、 このプロジェクトはまた、気候変化の影響を非常に受けやすいこの地域に、長期的かつ持続可能な解決策をもたらしてくれると期待されています。このボアホールは、ガシャモの町に住む11,000から25,000人の人々にきれいな水を直接提供するとともに、水を求めて周辺地域からやってくる人々にも資する可能性を持っています。「新しいボアホール掘削のことを聞いたわ。きれいな水を見るのが楽しみよ。近くにきれいな水がある生活をずっと夢みていたの」。ファラは笑顔で言います。
確かな水源を持たずに暮らしてきた人々に持続的に飲料水を届けるために、UNICEFはこれからも地域の水資源局とともに取り組んでいきます。
*ビルカ――伝統的な貯水池。雨が降ると流水を集める。