シエラレオネ:10万人以上の子どもたちに命を守る栄養治療ケアを実施
2023年4月17日 フリータウン(シエラレオネ)発

2023年4月17日 フリータウン(シエラレオネ)発
フリータウンにあるオラ・ドゥリング子ども病院の入院病棟で、食事の時間が始まりました。28床ある入院病棟では、24人の保健員のチームが、24時間体制で重度の急性栄養不良の子どもたちに治療ケアを行っています。しゃべり声や赤ちゃんの泣き声の中、入院中の子どもの母親たちが、朝食の治療用ミルクをもらうためにコップを持って並んでいます。
入院病棟の18番ベッドでは、ビクトリアさんが生後10カ月になる娘のセントちゃんに食事を与えています。セントちゃんは重度の急性栄養不良と診断され、2週間前にルンギにある地域の保健施設からこの病院を紹介されました。ビクトリアさんは、娘の体重が減っており、いつも泣いていて、さらに弱く、無気力になっていることに気がつきました。そこで、最寄りの保健施設に娘を連れて行き、診察と治療を受けることにしました。ビクトリアさんは、病院ですぐに診察を受けていなければ、娘を失っていたかもしれないと言います。
「娘が死んでしまうかもしれない、というところまで来ていました。でも、この病院を紹介されて適時に治療を受けることができたので、とても感謝しています。」とビクトリアさんが語ります。入院病棟の看護師のメッシ・フォディさんの言葉が、母親の不安は間違いではなかったということを裏付けています。「セントちゃんは重度の栄養不良の状態で運ばれてきました。その他の合併症も見られたため、注意して病状を観察する必要がありました。」
シエラレオネの2021年国家栄養調査によると、同国の5歳未満の子どもの25パーセント以上が発育阻害に陥っており、年間26万人近くの子どもたちが急性栄養不良に苦しんでいます。インフレ率の増加や燃料や市場価格の上昇を特徴とする現在の世界的な社会経済状況により、食料不安がさらに悪化しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの余波とウクライナにおける紛争で状況が深刻化しており、子どもの保健や栄養状態を含め、人々の生活や人間の安全保障、経済に直接的な負の影響が及んでいます。
日本政府と国民の皆様の寛大なご支援により、UNICEFは保健衛生省や栄養スケールアップ(SUN)事務局を通じてシエラレオネ政府を支援し、重度の栄養不良の子どもの適時な特定と適切な医療施設への紹介を改善し、重度の栄養不良と消耗症の治療ケアを継続することができました。この支援には、国中の保健施設に十分な量のすぐ口にできる栄養治療食や、高タンパク・高エネルギーの治療用ミルク(F-75、F-100)を配備する取り組みも含まれています。

メッシさんをはじめとする病院の保健員は、セントちゃんが適切な栄養と治療ケアを受けて体調を安定させ、回復に向かうことができるよう、入院以来、絶え間ない努力を続けています。この2週間でセントちゃんの体重は徐々に増え、回復の兆しが見えています。治療開始時に4キロだった体重も、これまでに1キロ増えました。ビクトリアさんは、「セントの健康状態が改善してとても嬉しいです。娘が病院で受けているケアや支援に感謝しています。」と、娘の健康状態の回復に希望をもって、嬉しそうに語ります。
UNICEF栄養専門官のキャサリン・ファイガオは、「このパートナーシップを通じて、栄養不良を減らし、子どもの健康状態を改善させるための大きな前進がありました。活動の結果、影響を大きく受けるボー地区と西部地域都市地区で、10万1,518人の栄養不良の子どもたちに治療ケアを行うことができました。」と語ります。
また、本支援で実施されたコミュニティへの啓発活動を通じて、11万4,429人の養育者が、上腕周囲径測定帯を使って子どもたちの健康状態を把握する方法を保健員から学びました。

この入院施設で定期的に保健員が行っている保健に関するお話会を通じて、ビクトリアさんは退院後に地元で手に入る食事を使って娘に食事を与える方法を学びました。そして、栄養大使として、妊娠中や母乳育児中の食事や子どもの食事の大切さ、病気になった時の早期治療の重要性について、他の母親たちに伝えていくことを誓いました。「退院したら、セントのように病気にならないように、生後6カ月まで完全母乳育児をして、子どもたちによい食事を与えるように友人にアドバイスします。」とビクトリアさんは語ります。

セントちゃんの治療が続けられる中、ビクトリアさんは娘がすぐに自宅に戻り、健康に成長していくことを心待ちにしています。「私はこの経験から、多くのことを学びました。セントがまた病気にかからないように、そして、大きくなったら私の面倒も見てくれるぐらい、健康に力強く育ってくれるよう、これからもしっかりと食事を与えていきます。」
看護師のメッシ・フォディさんは、適切な栄養を摂取することの利点や栄養不良に関する啓発活動に大きな成果が見られる一方、シエラレオネの女性と子どもたちの栄養状態の改善を維持していけるように、そして、コミュニティの人たちに適切な食事や衛生習慣について伝えていくために、さらなる支援が必要だと語りました。
【関連ページ】日本政府の支援によるシエラレオネでのUNICEF支援事業