ウクライナ:赤ちゃんキットを受け取った母親たちから安堵の声
2022年8月18日 ウクライナ発

2022年8月18日 ウクライナ発
2月に紛争が勃発する前、ハリナさんは、これから生まれてくる我が子のために、子ども部屋の飾り付けやベビーカー選びでいつも頭を悩ませていました。しかし、今、ウクライナのリヴィウにある病室で生まれたばかりの息子を見つめていると、そんな心配は些細なものだったと思えてきます。
「私たちが今生きていることを神様に感謝する――それだけを考え続けています。」と、ハリナさん(40歳)は赤ちゃんを抱きながら言いました。
ハリナさんと夫のナザルさん(40歳)は、キーウの産科病院で特別な立ち合い出産を計画していましたが、2月24日に紛争が始まると、爆発から逃れるために新たなすみかを探さなければいけなくなりました。
「爆発音で目が覚めたのを覚えています。」とハリナさんは振り返ります。「私たちが住むアパートの窓も揺れました。」
「近所に防空壕はなく、自宅のアパートには大きな空き地がありました。」とナザルさんも言います。「どこにも隠れる場所はありませんでした。」

ナザルさんとハリナさんは、恐怖におびえながらも必死におなかの子を守ろうと、2日間かけてリヴィウまで車で移動しました。途中、軍用機の低い音が聞こえ、野原が焼ける様子や避難する大勢のウクライナ人たちを見ました。
「あの時は、食べることも、何かを飲むことさえもできませんでした。赤ちゃんに悪影響があるのではと不安になり、自分に腹が立ちました。ストレスと恐怖で自分自身の置かれた状態に対処できませんでした。」
ハリナさんは、紛争の影響で、子どもが生まれても医療支援を受けることはおろか、おむつや粉ミルクすら買えないのではないかと心配していました。
「息子が生まれずにいてくれたおかげで、安全な場所を探す時間を持てたのはラッキーだったとさえ思っていました。」とハリナさんは言います。

ハリナさんの生まれ故郷リヴィウは、一家にとってすぐに安全な避難先となりました。到着後、一家は産科病院を見つけ、新居の近くの防空壕を探しました。ほどなくしてダニーロくんが生まれましたが、ハリナさんとナザルさんの喜びとは裏腹に、空襲のサイレンと銃声が鳴り響く日々が続き、ハリナさんは息子の将来に不安を募らせました。
「不安と先の見えない状況で、出産準備もままなりませんでした。」とハリナさんは言います。「子育て講座を受けたいです。しかし、息子のためにおもちゃや、くしさえ買ってあげることができなかったのです。」
日本政府や国民の皆様の資金協力で、ハリナさんとナザルさんは、赤ちゃん向けの衣類や衛生用品、体温計、ハサミ、おもちゃなどの必需品を詰め合わせた赤ちゃん用キットを受け取ることができました。日本政府の支援を受け、UNICEFは避難民の女性が出産したウクライナ国内300カ所の病院で、これまでに1万5,000個の赤ちゃん用キットを配布しました。この取り組みはウクライナ全土の10地域で実施されています。
赤ちゃん用キットを開き、子ども用のオーバーオールや、赤ちゃん用のくし付きの鏡を見るうちに、ハリナさんの顔に笑みがこぼれました。
「ここに入っているのは、すべて本当に必要なものです。」とハリナさんは言います。「このガラガラは、息子にとって、初めてのおもちゃです。」
