インドネシア:コロナ後の学習の再開を支える、乳幼児期の子どもの発達に対する包括的な支援
2022年12月15日 インドネシア発
2022年12月15日 インドネシア発
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で学校が長期間閉鎖されていた東ヌサトゥンガラ州で新学年度が開始され、エミー・ビフェル先生は喜びを抑えきれません。エミー先生の生徒であるベタニア・トゥヌア就学前教育センターの子どもたちが、教室にある様々な知育玩具で遊んでいます。
「今ではセンターに子どもたちが教室や屋外で遊べる道具があるので、とても助かります。」エミー先生が満面の笑みを浮かべます。「生徒たちが遊びながら学ぶことができ、子どもたちの創造力も刺激されます。」

ここまでのエミー先生の道のりは長いものでした。資金や人材が限られるなか、信頼できる就学前教育センターを作り、コミュニティの人々の乳幼児期の子どもの発達の重要性に関する認識を高めることは容易ではありませんでした。
2020年はじめに東ヌサトゥンガラ州で初めて感染が確認されたCOVID-19のパンデミックで、その道のりは大きく後退しました。学校が約2年間閉鎖されたことで、エミー先生は生徒たちが教室の外でも学び続け、親たちに就学前教育の重要性を理解してもらうため、より一層努力しなくてはいけませんでした。

生徒たちの教育に力を入れる中、エミー先生の学校が、日本政府の資金協力でUNICEFが実施する乳幼児期の子どもの発達に関するプログラムの対象校に選ばれました。
このプログラムは、COVID-19の影響で学習機会を喪失した子どもたちの学びを取り戻す支援を行い、小学校の教育にうまく移行できるよう、幅広い総合的な支援の提供を目的にしています。質の高い教育や必要不可欠な水と衛生、保健、保護サービスのアクセス改善に重点を置いた取り組みを行っており、子どもたちはCOVID-19の予防方法について学びます。
このプログラムでは、生徒の学習方法を改善させるための教員の能力の構築や、両親や養育者が子どもの発達を全般的に支えられるようにするための支援も行われています。また、地方自治体や保健員、ボランティア、コミュニティの人々の乳幼児期の子どもの発達への関与を高めるための取り組みにも力を入れています。
エミー先生は、子どもの発達に関する包括的な取り組みに関する研修を受けました。そして、遊びを通して早期から読み書きの能力を身に着けられるようにするためのサポート方法や、栄養不良の子どもの特定方法を含めた子どもの健康状態の確認方法、手洗いをはじめとする健康的で衛生的な習慣を促進する方法などを教わりました。また、さまざまな特性を持つ子どもたちの行動に対応するための新しい方法も学びました。

現在、エミー先生とワティ・リエン先生は教室の壁に貼られた大きな表を使って、生徒たちの予防接種状況を確認しています。この取り組みは、保護者が予防接種の重要性を知り、子どもたちが定期予防接種を受けることを推奨しています。
「保護者のなかでも、子どもの予防接種の状況を把握しているのは母親だけです。この表を通じて父親にも情報が伝わり、母親も父親も同じように次にしなくてはいけないことが分かるようになるのです。」と、エミー先生が話します。
「乳幼児期の子どもの発達プログラムは、教育だけではありません。」エミー先生が話します。「学習の進捗状況を把握するだけでなく、身長や体重、腕の太さなどをきちんと測定していく必要があります。そうすることで、子どもの健康状態を把握することができます。」エミー先生にとっても、彼女が新しい知識を共有する多くの親たちにとっても、これは画期的なことでした。
エミー先生をはじめ、東ヌサトゥンガラ州で160人の就学前教育の教員が研修を受け、3,200人の親や養育者が、前向きなしつけやその他の重要な子育てに関する課題に対応するための子育て支援プログラムに参加しました。このプログラムは、パプア州、南スラウェシ州、東ヌサトゥンガラ州にある200の就学前教育センターと100の小学校で実施されています。
子どもたちがエミー先生の教室に戻り、子どもたちの明るい未来のためにより力を尽くすことができる環境が整った今、先生の希望は大きく膨らみます。「教師としての私の願いは、子どもたちがより良い未来を手に入れられるようにすることです。そのためには、乳幼児期が重要です。」エミー先生が自信をもって語りました。
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パプア州、南スラウェシ州、東ヌサトゥンガラ州の幼い子どもたちがCOVID-19から復興するために必要なサービスを支援してくださった日本政府に、心より感謝いたします。
【関連ページ】日本政府の支援によるインドネシアでのUNICEF支援事業