パキスタン:少女たちが学習を続けられるように-中等教育への移行を支える
2022年12月21日 パキスタン発

2022年12月21日 パキスタン発
パキスタンの多くの10代の女の子たちにとって、教育には大きな挑戦が伴います。16歳のフィルドゥース・ブットーさんも、その例外ではありません。
「幼い頃は学校に通っていました。でも年を取るにつれて、一度ならず二度までも退学しなくてはいけなくなりました。」フィルドゥースさんが語ります。
フィルドゥースさんは、パキスタン南東部に位置するシンド州の農村地域、ゴートキにある、わずか40世帯が暮らすカディプールという小さな村に住んでいます。
フィルドゥースさんは幼い頃に初めて学校に通いました。しかし、大きくなると、村で学校に通っているのは彼女一人だけになってしまいました。いとこや友達が家にいる中、自分だけ学校に通っているのが不思議で孤独を感じたと言います。
その後フィルドゥースさんは学校に行かないようになり、道路を挟んだ向かい側の村にある別の教育施設に入学しました。しかし、通学には市場を通る必要があり、男の人がたくさんいる地域を一人で歩いているという噂がコミュニティの人々の中で広まってしまいました。フィルドゥースさん自身も知らない村にいることが落ち着かず、再び退学してしまいました。
国際協力機構(JICA)の技術支援を受けてシンド州教育省が主導するプログラムの一環として、UNICEFが非公式基礎教育センターを開設すると、状況は一変しました。
日本政府と国民の皆様のご支援で、シンド州のゴートキとカイルプールに計150のセンターが設置されました。フィルドゥースさんのような女の子にとって、これは一生に一度のチャンスです。約5,000人の子どもたちがこれらのセンターで学んでおり、その60パーセントは女の子です。

非公式教育プログラムは、中退したり一度も学校に通ったことのない子どもたちが加速学習カリキュラムで勉強し、小学校を卒業できるように支援するプログラムです。
しかし小学校を卒業しても、多くの生徒、特に女の子にとって、学習を続けることは困難です。フィルドゥースさんも、小学校卒業後に学習を続けることができせんでした。時間を無駄にしないためにも、彼女はスマートフォンの使い方や履歴書の書き方、人生の目標設定を学ぶ民間の起業家育成コースに参加することにしました。
「目標設定のクラスが一番楽しかったです。人生で何かを成し遂げるためにも、まず教育を受けることが私の唯一の最優先すべき目標だと思いました。これ以上に大切な目標なんてありますか?」フィルドゥースさんが話します。
コースを終えても、中等教育に進むことができるのかという不安は消えませんでした。

フィルドゥースさんのような生徒の中等教育への移行を手助けするため、UNICEFはJICAの専門的な助言を得て、6年生から8年生用の「パッケージD」と呼ばれるカリキュラムを開発しました。初等教育を終えた子どもたちのための授業がフィルドゥースさんの村でも開始され、彼女をはじめ、40人の生徒たちが参加しました。
「フィルドゥースは、叔父のようになりたいといつも言っていました。」母親のスグラさん(35歳)が話します。「彼女の叔父はセンターで教えていて、この村で教育を受けた数少ない住民の一人ですから。」
「私たちのコミュニティでは、女の子を学校に通わせることは珍しいことではありません。夫も私も、教育を受けたいという娘の夢を叶えてあげたかったのです。私たちはいつも、娘を応援しています。教育で知恵を得ることで、より良い機会を手にしてより良い人生を送ることができます。世界は変わり続けています。女の子も知識を身につけることが大切です。」と、スグラさんが語りました。

UNICEFのパートナー団体のソーシャル・オーガナイザーのラビア・アシュラフさんは、学習にあたって直面する困難を乗り越えて成功している女の子の姿を見ると、希望を感じると言います。
「今は、センターの女性教員を見つけることに苦労しています。フィルドゥースさんのように初等教育後も勉強を続けようと心に決めた女の子たちが、このプログラムのおかげで教育を受けられるようになった姿を見ると、やっと変化が起こりつつあるのだと、希望が湧いてきます。彼女のような女の子たちが卒業し、模範となることで、村の他の少女たちをより良い生活、より明るい未来へと導いていってくれることでしょう。」
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