シリア:学校から始まる明るい未来
2022年11月22日 ホムス(シリア)発

ホムス郊外にあるババアーメ地区では、長期にわたる紛争で学校や教育施設が大きな影響を受けています。オマル・ムフタール学校も、その一つです。
2014年から2018年まで、この学校は国内避難民の避難所として使用されていました。「当時のこの建物の悲惨の状況は、言葉では表すことができません。」と、近所で長年暮らしているラエダ校長先生(47歳)が話します。

2019年、避難民の家族たちは別の教育施設に移り、教育省が学校の一階部分を修復して再び使用できるようにしました。帰還民の増加に伴って、この地域で稼働している学校が足りなくなったため、学習スペースの需要が非常に高まっていたのです。
「ババアーメには3つ学校がありますが、帰還民が多く、どの学校もとても混みあっています。」と、ラエダ校長が説明します。

2022年、UNICEFはオマル・ムフタール学校の修復支援を実施し、校舎の二階部分の修繕、就学前教育のクラスの整備、生徒の年齢に適した水と衛生施設の設置などの支援を行いました。

この学校には、トイレなどの障がいのある子どもたちが利用できる設備も整備され、教室や職員室に家具も提供されました。
2022年5月に支援が完了し、校舎の二階は2022-2023学年度から利用できるようになりました。

学校の修繕により、生徒数は120人から350人以上に増加しました。「親たちは、子どもたちには最高の教育を受けさせたいと思っています。学校がきれいに修復され、適切なスペースが確保されたことが、親たちが子どもをこの学校に入学させる後押しになっています。」と、ラエダ校長が話します。

東部地域出身の子どもたちの中には、初めて学校に通う生徒たちもいます。その中には少しだけ非公式教育を受けていた子どもたちもいましたが、退学を余儀なくされ、同学年の生徒たちから何年も遅れを取っていました。「今年は入学率が上がり、カリキュラムBのクラスは満員になりました。」と、ラエダ校長が話します。「カリキュラムB」プログラムは、2学年分を1つにまとめ、子どもたちが学習の遅れを取り戻すことができるように支援する加速学習プログラムです。
「カリキュラムBのクラスを担当して2年になります。子どもたちが受けられていない教科をまとめて学んで学習のペースを取り戻し、やる気を維持していくのは、容易なことではありません。」カリキュラムBを担当するアモン先生(47歳)が話します。「このプログラムは、学校に通えない子どもを減らし、子どもたちが再び学習の場に戻る、貴重な機会であることは間違いありません。」

「この学校が大好き。カラフルで素敵な学校だよ。算数が好きで、将来はお医者さんになりたいです。」と、カリキュラムBのレベル1のクラスに参加するマヤちゃん(9歳)が話します。マヤちゃんは、シリアのパルミラから家族と一緒に避難しました。「私も双子の妹のアヤも、一度も学校に行ったことがありませんでした。」と、マヤちゃんが話します。就学前教育は、この地域の住民の非常に大きな功績です。「現在このクラスには25人の生徒が登録していますが、実際にははるかに高い需要があります。」アンワール先生が語ります。
「今年、この学校は大きく変わりました。広くなって、明るくなりました。とても気に入っています。トイレが使えるようになったのも、嬉しいです。」と、12歳のワエドさんが話します。

シリアでは、240万人以上の子どもたちが学校に通っていません。UNICEFは、学校の修復、家具や学習物資、教科書の配布、子どもの就学を促すためのコミュニティの動員、教員の研修、加速学習や自習のための教育方法や教材の開発など、子どもたちが再び学ぶことができるようにするための支援を行っています。
2022年、UNICEFはシリアの24校の修復を支援し、現在さらに32校の学校の工事が進められています。この活動は、日本政府や、復興金融公庫を通じたドイツ連邦経済協力開発省、フィンランド政府、スイス開発協力機関の支援によって可能となりました。また、これらのUNICEF活動はシリアにおける都市・農村部のレジリエンス(回復力)と復興のための環境を築くための国連共同プログラムの一環として行われており、欧州連合とノルウェー政府の支援で実施されました。また、修復した学校への家具の提供は、カナダ政府やスウェーデン政府の支援を受けて実施されています。
【関連ページ】日本政府の支援によるシリアでのUNICEF支援事業