エチオピア:紛争やコレラの脅威に対するレジリエンスを高めるために活躍する地域のボランティア
2019年10月10日 エチオピア発

2019年10月10日エチオピア発
エチオピアのルクレ村にある、ビニールシートの屋根の半壊した家の中に座る30世帯の家族たち。子どもたちはかつて学校だった廃墟で遊んでいます。彼らは2018年の終わりにエチオピアのソマリ州とオロミア州境沿いで勃発した暴力によって自宅からの避難を強いられ、最近故郷に戻ってきたばかりです。
夫と死別し、28人の子どもの祖母でもある60歳のセイノ・モハメド・シロは、紛争が起こる前の生活が彼女や近隣の人々にとってどれだけ幸せであったかを語りました。「私はかつて、土地や家畜を持っていました。3頭の牛と4頭のロバを飼っていて、ソルガムという雑穀を栽培して売り、次の年に向けて蓄えていました。36枚の鉄の板で作られたトタンの家もありました。」
しかし、2018年終わりに紛争が勃発し、セイノと彼女の家族は自宅からの避難を余儀なくされました。「何も持たずに村を出ました。彼らがやってきて、翌年のために蓄えていた穀物など、財産をすべて奪っていったのです。私の家だけでなく、近所のすべての家が焼かれ、略奪されました。」
セイノの家族や近所の人々は、近隣の町バビレに9カ月間避難し、紛争が止んだ最近になって故郷に戻ってきました。しかし、故郷への帰還にはつらい現実も待っていました。セイノと近所の人々は、何も持たずに、何もない場所へ帰らなくてはいけなかったのです。そこには、食料や家、トイレや石けん、飲み水などの基本的なものすらありませんでした。
日本政府とエチオピア人道基金の資金協力のもと、UNICEFはセイノやその家族のような帰還民に安全な水と衛生環境を提供するため、オロミア州政府に支援を行いました。この支援により、地域の水道局はコミュニティの井戸の修復や新たな浅井戸の採掘、仮設トイレの設置と各家庭への石けんや給水タンクの配布を行いました。さらに、セイノのような『水と衛生委員会』の昔のメンバーたちに給水所や給水タンクをきれいに保つ方法や手洗いの方法、トイレの作り方と使い方をコミュニティの人々に伝えられるよう、再度研修が行われました。
紛争中に壊れ、今は修繕されたコミュニティの井戸で、セイノが誇らしげに給水タンクに水を汲み入れています。彼女や『水と衛生委員会』のメンバーたちは井戸を清潔に保ち、フェンスを立てて動物が中に入らないようにしています。セイノは、毎日どのように井戸を解錠し、どのようにコミュニティの人々に家や水源付近での正しい飲料水の保管方法を伝えているのかを説明しました。蚊の繁殖を防ぐために、水に蓋をしておくことが重要です。一方、コミュニティでの井戸の使用頻度の増加は、水が枯渇するリスクにつながります。UNICEFは日本政府の支援を受け、将来の持続可能な飲料水の供給を確保するために地域水道局を支援し、新たに6つの浅井戸を掘りました。そして、そのうちの1つは、ルクレにあるセイノのコミュニティに作られました。
井戸からの帰り道にある仮設トイレのそばを通り過ぎながら、セイノが「仮設トイレはとても役に立っています。もしトイレがなかったら、この辺りは排泄物がいっぱいで歩けませんでした。」と語りました。トイレはルクレ村をきれいに保ち、何よりも重要なことに、コレラの原因となる有害な菌をまき散らすハエの発生を防いでいます。
コレラの脅威
故郷へ戻って生活を再建させる中で、セイノやその家族は新たな課題に直面しています。2019年6月にオロミア州でコレラの発生が宣言され、7月21日には世界保健機関(WHO)が同州において2名の死亡を含む437名のコレラへの感染を確認しました。
日本政府からの資金援助により、UNICEFはオロミア州の地域水道局と地域保健局に対して、セイノの暮らすコミュニティのようなコレラの危険に晒されている地域に対して、コレラの認識向上や衛生環境の促進のための研修を実施しました。『水と衛生委員会』の一員として、セイノもコレラに関する認識向上や予防、手洗い、トイレの重要性に関する研修を受けました。そして、保健普及員と共にコミュニティで認識を高めることが彼女の新たな仕事となりました。「誰かがコレラに感染すれば、次の日には他の誰かの命を奪ってしまう可能性があると教わりました。」とセイノは言います。「だからこそ、夜に下痢の症状が出たら、翌日死んでしまう可能性もあることをコミュニティの人たちに教え、下痢の症状があったらすぐ報告することが重要なのだと強調しています。」
『水と衛生委員会』のコレラに関する研修について語っているうちに、セイノはますます一生懸命に、そして早口で、嘔吐などのコレラの症状ついて教えてくれました。なぜ彼女がこれほどにも人を引き付ける、コミュニティにおけるコレラの予防に関するロールモデルなのかは明らかです。
「研修後、教わった衛生習慣をすぐに実践しました。食事の準備の前、食前、トイレの後、子どもに食事を与える前、そして子どものトイレの後と、手洗いには5つの重要なタイミングがあります。トイレの後は、石けんと水で手を洗うことがとても大切です。」と、セイノが手洗いの方法を実践しながら説明してくれました。
保健や衛生に関する認識の向上や政府や地域のボランティアによる研修のおかげで、幸いにもセイノのコミュニティではコレラ感染者はまだ出ていません。
深刻な課題に直面しているにも関わらず、セイノは安全な水やトイレの使用、手洗いを通じて、家族や孫たち、コミュニティの人たちが健康でいられるよう、これまで以上に精力的に活動しています。「特に女性や年配の方など、更に多くの人々が私のようにコミュニティにとって有益な存在になって欲しいと考えています。話し合い、学び、そして経験を共有することで、解決策は私たちの中から生まれるはずです。誰も病気にかかることのない未来を目指します。」

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