フィリピン:デジタル技術で子どもたちの予防接種に革命をもたらす
2023年5月26日 フィリピン発

2023年5月26日 フィリピン発
保健センターで職員にお礼を言う母親の隣で、保健員のインジェーラ・モカさんが、生後3カ月のモハメッドくんの予防接種記録を記入しています。南ラナオ州のこの保健センターでは、フィリピンの他の保健施設と同じように、保健員が子どもたちの予防接種の情報を紙で管理しています。UNICEFと保健省は、この状況に変化をもたらすための解決策を取り入れようとしています。
子どもたちのワクチン接種記録をリアルタイムで記録し、母親が次のポリオの予防接種の予約のお知らせを受けられるようになる、オンラインのシステムを想像してみてください。日本政府の資金協力で、すべての子どもが人生を変えるワクチンの恩恵を受けられるようにするための機能を備えた、予防接種情報システムの整備が進んでいます。
フィリピンでは、100万人以上の子どもたちが一度も予防接種を受けていません。2022年にはGDP成長率が7.6パーセントを記録し、世界で最も急速に成長している国の一つであるにもかかわらず、ワクチンを接種していない子どもが世界で5番目に多い国です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック後、フィリピンの一部の人々が遠隔医療などの医療技術の恩恵を受ける一方、多くの子どもたちは依然として最も基本的なサービスを受けられずにいます。

データの追跡や管理は、一連の予防接種のサイクルの中でも、依然として最もぜい弱な過程となっています。紙による記録は、災害や紛争でなくなってしまったり、保健員や助産師の離職によって失われることがあります。また、リアルタイムで情報を把握できるシステムがないため、予防接種を受けていない人を追跡することができず、計画の策定にも制約が生じます。
UNICEFは保健省が新たに開発した同期化された予防接種電子記録と統合し、すべての予防接種データが一元的に処理できるようにする、モバイル版の予防接種情報システムの開発を進めています。このモバイル版の予防接種情報システムは、国レベルから地方自治体レベルまで、保健システムに幅広い恩恵をもたらします。例えば、適時に質の高い網羅された報告書を作成したり、保健員や患者が利用できる予防接種の予約やお知らせの通知、データの視覚化や図表の作成、感染症の発生状況の登録、住民がワクチンを拒否する理由の追跡などを行うことができます。また、モバイル端末を使用することで、インターネットに簡単に接続することができ、多くの機能が備えられたパソコンよりも費用効率が高くなります。

「すべての子どもにワクチンを届けるということは、科学技術のイノベーションを最大限に活用する新しい取り組みへの投資を意味します。現在支援が行き届いていないコミュニティは、さらに取り残されてしまう可能性があります。すべての子どもが恩恵を受けられるような解決策を用いて、デジタル格差を埋めていかなくてはいけません。」と、UNICEFフィリピン事務所の知識・イノベーション・データ駆動システムチームの担当官が話します。
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