UNICEF暗号資産ファンド:インクルーシブなデジタル金融のために

2022年1月19日 ニューヨーク発

UNICEF
2022年1月19日
携帯電話を覗き込む2人の女性
UNICEF/UN0371205/Arcos

2022年1月19日 ニューヨーク発

2019年10月、UNICEF国連機関としては初となる、暗号資産ファンドを立ち上げました。国連システム内で現地の不換通貨(フィアット通貨)に変換しない暗号資産の使用は、これが初めての試みです。 

世界がよりつながりを深め、デジタル化されていることは、驚くべきことではありません。新型コロナウイルスの感染(COVID-19)のパンデミックはこの傾向をさらに加速させ、仕事や学校、人々の交流まで、全てをテクノロジーに彩られた現実へと変化させました。金融のデジタル化という点では、ケニアのようにGDPの87%がデジタルで取引されている国があり、欧州連合(EU)が「デジタル・ユーロ・プロジェクト」を立ち上げるなど、様々な動きが見られます。こうした動向を踏まえ、UNICEFのイノベーション部では、暗号資産を含むデジタル通貨の活用と、それがUNICEFの活動に与える影響について検討してきました。 

携帯を手に微笑む女の子。
UNICEF/UN0378322/Panjwani

暗号資産と新興国市場 

暗号資産の利用は、新興市場の国々で好調に推移しています。これらの国では、暗号資産に関する主要な指標(導入率、取引量、マイニング)において、米国を除けば世界をリードしていると言えます。暗号資産の導入国上位20カ国(ほとんどが新興国または開発途上国)のうち、暗号資産の利用はボトムアップとトップダウンの両方で行われており、政府はマクロ経済レベルでデジタル通貨の有用性を調査・認識しています。

これは、金融商品を利用するためのコストや、障壁が高いあるいは非常に高い、通貨が弱いまたは安定していない、金融仲介者が信頼できないまたは好ましくななど、ボトムアップの環境下で特に顕著に表れています。その使用事例として増加しているのが暗号資産の送金で、特にCOVID-19のパンデミックの中、新興国のぜい弱な人々にとっての命綱となることが証明されています。 

政府も、暗号資産の採用に向けてトップダウンのアプローチを模索しています。例えば、政府の中央銀行が発行するブロックチェーンを基盤とした不換通貨(中央銀行デジタル通貨)は、サービスを受けられていない何百万人もの人々に、金融の包摂性と市場アクセスをもたらす可能性を秘めています。2020年10月の発行以降、カンボジアのデジタル通貨「バコン」により、590万人以上のユーザーが直接または間接的に恩恵を受け、2021年上半期だけで5億ドル以上のデジタル取引が行われました。バコンは、従来の銀行間取引に代わる低コストな手段を提供するだけでなく、より多くのユーザーを金融システムに取り込み、国境を越えた決済のための途切れのないシステムを提供することを目指しています。  

現在までに87カ国(世界のGDPの90%以上)がデジタル通貨の発行を検討しています。うち9カ国が中央銀行デジタル通貨の立ち上げが完了しており、最も新しい例として、ナイジェリアの「イーナイラ」が挙げられます。14カ国がパイロット段階、16の中央銀行デジタル通貨プロジェクトが開発中、トラッキング調査をした国のほぼ半数が中央銀行デジタル通貨の規模や範囲に関する研究を行っています。中央銀行デジタル通貨は依然として政府主導の暗号資産の促進における主要なトレンドである一方、フィリピン政府が取っている異なるアプローチは大変興味深いものとなっています。フィリピンの中央銀行が発行したガイドラインでは、ブロックチェーンを基盤とした金融サービスを使用・実現する全ての主体が、銀行のライセンス要件の対象となります。この枠組みを導入することで、フィリピンの中央銀行は暗号資産がマネーロンダリングやテロなどの不正な目的に使用されるのを防ぐために規制管理を行うとともに、金融イノベーションを促進することを目的としています。 

全体として、非代替性トークンや分散型自律組織などの新しい使用事例に対する市場の関心、積極的なベンチャーキャピタル投資、分散型台帳技術の進展により、暗号資産が加速していることから、暗号資産市場の成長は今後急増すると予測されます。調査によれば、今後10年間の年平均成長率は7パーセントから15パーセントとされています。 

しかし、この急成長を妨げるような要因も存在しています。例えば、中国が最近暗号資産を禁止したように、政府が暗号資産に対して突然立場を翻したり、暗号資産の収益を他の規制対象資産と同様にグレーゾーンで課税することを決定したりする可能性があります(インドでは現在検討中)。また、開発途上国でのインターネット接続の欠如や、ブロックチェーンと直接やりとりするための技術的スキルの欠如が、消費者の関心の高まりにもかかわらず、成長を鈍化させる可能性があります。取引所やその他の仲介業者に依存することは、不正行為が行われたり、高額の手数料や予測不可能な手数料で締め付けたり、サイバー攻撃にさらされたりする可能性があり、スキルの不足が解決される、または規制が厳しくなるまでの間は、リスクとして残り続けることになります。 

携帯を見ながら歓談する女の子たち。
UNICEF/UN0212339/Noorani

UNICEF暗号資産ファンドは、新たな機会、効率性、探求をもたらします。 

デジタル通貨が世界で記録的な普及を見せる中、UNICEFは暗号資産ファンドを通じて暗号通貨を保有、受領、投資することで、世界中の人々へのサービスや機会の拡大を可能にしています。 

暗号資産ファンドは、新たなパートナーシップの機会と、子どもたちのための新たなリソースを生み出しています。UNICEFは暗号資産を使った活動を行っていることで、技術的にも資金的にも、初めて暗号資産ファンドへの支援に関心を持つ暗号資産・非暗号資産ドナーが現れています。 

UNICEFが行う投資の効率性と透明性が飛躍的に向上しています。従来の現地通貨による投資と比較して、暗号資産を使用することで、取引のスピードとコストが改善されました。取引は100パーセント一般に公開され、資産の移転は数分以内に行われます。現在までにUNICEFが送金手数料に費やした金額は0.01%未満で、各取引(例:スタートアップ企業への資金送金)の平均決済時間は10分未満でした。暗号資産建ての投資は、UNICEFが出資したスタートアップ企業に独自の利益をもたらしています。 

  • スタートアップ企業は、技術支援やメンター支援を通じて、新たなパートナーの専門知識の恩恵を受け、ソリューションの開発を加速させることができます。
  • スタートアップ企業は、暗号資産による資金調達により、世界中の優秀な人材を採用し、社員への支払いを簡単に行うことができたと述べています。世界中のトップ開発者の多くは、不換通貨ではなく暗号資産での支払いを好むため、これらスタートアップは魅力的なサービスを提供していることになります。
  • スタートアップ企業からは、従来の送金方法とは異なり、低コストで送金できることや、国境を越えてより容易に送金できることが、メリットとして挙げられています。
  • 暗号資産の透明性を考慮すれば、企業の財務報告を行うこともはるかに容易になります。スタートアップに暗号資産を提供することで、UNICEFはベンチャーキャピタルの分野で独自の地位を確立しています。   

UNICEFや国連の中では、ブロックチェーンや暗号資産について学ぶことへの関心が高まっており、暗号資産ファンドはブロックチェーンや暗号資産に関するイノベーション・コミュニティを育成するための学習コースを行っています。

 

暗号資産と環境   

新たな技術を探求するとき、それが現在の問題解決に役立つだけでなく、将来的に問題を生み出さないことを保証する義務があります。暗号資産のマイニングにはエネルギーが必要です。なかには想定より多くのエネルギーを使用するものもあり、多くのブロックチェーンはより効率的な運用方法(例:必要なエネルギー消費の削減)を検討しています。UNICEFはこの点について継続的に監視しています。 

暗号資産のマイニングにはエネルギーを使用しますが、調査によれば、その使用エネルギーの多くは余剰エネルギーまたは再生可能エネルギーを用いていることがわかっています。世界の銀行システムと比較して、暗号資産が使用するエネルギー量を全体として考慮する必要があります。多くのブロックチェーン・アプリケーションは、民間のブロックチェーン・ネットワーク上で動作し、他の種類のアプリケーションと同様に、動作に必要なエネルギーはごくわずかです。さらに、暗号資産は、クリーンエネルギーの生産と貯蔵の補完技術として機能することで、世界のエネルギーの再生可能エネルギーへの移行を加速させる機会を提供しています。 

例えば、最近の非代替性トークンのブームにより、非代替性トークンの多くが売買されているイーサリアムに注目が集まっています。現在イーサリアムの取引1件が消費する電力は、米国の平均的な家庭が1週間に使用する電力と同程度です。しかし、イーサリアムは、2022年にプルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークへの移行という、これまでにない大幅なアップグレードを予定しており、ネットワークのエネルギー使用量を99%削減し、ブロックチェーンを暗号資産ユーザーと開発者のための大きな環境に優しい選択肢として位置付けることを約束しています。5年以上にわたる研究開発の成果であるイーサリアム 2.0(Eth2)は、急成長するブロックチェーンを「より拡大可能で、より安全で、より持続可能」にすることを明確な目的としています。 

ブロックチェーンに関わる際には、特定のネットワークのエネルギー使用量を比較評価し、十分にそのメリットと比較検討することが重要です。