シリア:新しい学校、新しい始まり-障がいのある子どもたちへの総合的な支援

2021年12月5日 ダマスカス郊外県(シリア)発

UNICEF Syria
2021年12月05日
ヌールさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan

2021年12月5日 ダマスカス郊外県(シリア)発

シリアのダマスカス郊外県のアンナシャバフ、アリクサ村に暮らすヌールさんと姉のアイタブさんは、毎日長い時間をかけて学校に通っています。歩いて7分の道のりも、ふたりにとっては30分。雨の日には、もっと時間がかかることもあります。

ヌールさんとアイタブさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan 姉のアイタブさん(12歳)の力を借りて車椅子に乗り、ダマスカス郊外県にあるアリクサ村の家から学校に向かうヌールさん(11歳)。

ヌールさんの車椅子を押すアイタブさんは、途中で何度も立ち止まっては、ぬかるんだ泥道から車椅子を引き上げます。大変な道のりを経て学校に到着すると、ふたりの顔に満面の笑みがこぼれました。「去年の夏、やさしい人たちがやって来て、学校を直して、素敵な絵で壁を飾ってくれたの。毎日学校に行くのがとても楽しみ!」ヌールさんが話します。

ヌールさんの足をフットレストに乗せ直してあげるアイタブさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan 学校までの道のりの途中、ヌールさんの足をフットレストに乗せ直してあげるアイタブさん。

ヌールさんが教室に入る手助けをするため、校門には友達が待っています。自分の教室に向かうアイタブさんにお別れを言うと、ヌールさんも友達と一緒に、2階にある教室に向かいます。「去年は、ドアも窓を覆う扉もありませんでした。寒い日には、何人かの生徒が家から持ってきた毛布で、窓を覆いました。ほとんどの時間、寒くて授業に集中することができませんでした。」と、5年生のヌールさんが話します。

算数の授業を受けるヌールさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan 学校で算数の授業を受けるヌールさん。

ヌールさんが通学するモハメド・ホスニ・カセム学校のアブドゥルハリム校長は、「もう生徒や教員たちは、校内でどうやって暖かく過ごそうか、どうやって頭上から雨水が落ちてこないようにするか、心配する必要がありません。授業に集中できます。」と話しました。この学校は、アリクサ村で唯一機能している学校で、1,000人以上の小中学生に2部交代制で授業を行っています。「去年との大きな違いは、建物だけではありません。先生や生徒のやる気も向上しました。」

「今年は、生徒たちのストレスも少ないようです。紛争による厳しい現実のなか、生徒たちが快適な環境下で日常の感覚を取り戻すことができるようにするために、学校の壁は明るい色で塗られました。」と、アブドゥルハリム校長が語ります。

アラビア語の授業を受けるヌールさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan アラビア語の授業を受けるヌールさん。

「2013年に夫が亡くなった後、自宅からダマスカス郊外県のサリミーに避難しました。工業地帯なので、家族の生活を支えるための仕事を探すこともできました。」と、ヌールさんの母親のグースンさんが話します。夫が砲撃を受けて命を失った後、グースンさんはヌールさん(11歳)、アイタブさん(12歳)、アハマドくん(16歳)、マハムッドくん(15歳)の4人の子どもたちを抱え、一家を支える大黒柱となりました。

サリミーでは家を借りる金銭的余裕がなかったため、テントに身を寄せていました。避難から数カ月経った強風が吹き荒れる夜に、テントが壊れ、家族全員が怪我をしました。ヌールさん以外は、軽症でした。「片麻痺で、もう私の小さなヌールは二度と歩くことができないと、医者に告げられました。娘はたった、3歳でした。」と、グースンさんが、ヌールさんの下肢麻痺の原因となった事故を思い出しながら話します。

事故後、ヌールさんには特別なケアが必要となり、家族の出費は大きく増加しました。近くの工場で働いていた母親は、娘の世話をする時間を十分に割くことができませんでした。「ヌールは定期的に医療ケアが必要でした。」そしてグースンさんは、悲しそうに話を続けました。「長男のアハマドは学校をやめて働かなくてはいけなくなりましたし、私は仕事を辞めてヌールの面倒を見なくてはいけませんでした。何よりも苦しい決断でした。」

自宅で勉強するヌールさん。
UNICEF Syria/2021/Shahan 自宅で勉強するヌールさん。

暴力が収まりを見せた2020年、家族は7年間のサリミーでの避難生活を終えて、故郷に戻りました。しかし、自宅は紛争で完全に破壊されていました。同年に修復作業が終わり、一家は再び故郷のアリクサ村に戻ることができました。

そしてグースンさんは真っ先に、子どもたちを学校に入学させました。「学校に戻った初日、ヌールや、アイタブ、マハムッドは、少し残念そうでした。ヌールは、学校が寒いと言っていました。今では、ヌールが学校に行くために一番早く起きるんですよ。」

2021年、UNICEFは日本政府とロシアの寛大なご支援により、ダマスカス郊外県の6校の学校の修繕を行い、4,700人の生徒の安全な環境下での教育の再開を支援しました。

2020年7月、グースンさんは、障がいのある子どもたちへの定期的な現金給付とケースマネジメントを行う、UNICEFの総合的な社会保護プログラムを知り、娘を登録しました。そして、ヌールさんの基本的なニーズを満たし、必要な費用を賄う手助けとなる、現金給付支援を受け始めました。「ヌールに暖かい服や、学校の制服、文房具を買うことができました。」と、グースンさんが笑顔で語ります。受け取ったほとんどの給付は、教材や学用品など、ヌールさんの学習のために充てています。「将来は弁護士になりたいという娘の夢をかなえる手助けをしたいのです。」とグースンさんが話します。

このプログラムの一環として、ヌールさんには担当の相談支援員がつき、将来、より包括的な社会サービスを受け、公平な就業機会を手にできるようにするため、障がい者手帳の発行を支援しました。相談支援員は定期的に家族のもとを訪れ、ヌールさんのニーズを確認し、診察や治療のために医者を紹介しました。また、ほとんど機能していなかった古い車椅子の代わりに、ヌールさんが新しい車椅子を手に入れられるように手助けしました。

日本政府をはじめ、欧州委員会人道援助局やスペイン、カナダなどの寛大なご支援のおかげで、ヌールさんを含む、6,000人以上の子どもたちが、UNICEFの総合的な社会保護プログラムの恩恵を受けることができました。この事業では2017年以降、ダマスカス郊外県に暮らす重度の障がいをもつ子どもたちの家族が子どもたちのニーズに対応し、社会サービスを利用することができるように支援するため、定期的な現金給付やケースマネジメントが行われています。

 

【関連ページ】日本政府の支援によるシリアでのUNICEF支援事業