南スーダン:コミュニティにおける啓発活動がワクチン接種の受容を促す

2021年7月21日 南スーダン発

UNICEF South Sudan
2021年7月21日
啓発活動を行う様子。
UNICEF South Sudan/2021/Hill

2021年7月21日 南スーダン発

COVAXファシリティ*によって供給された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンが到着したことを南スーダン中の人に伝えるには、どうしたらいいでしょうか?

南スーダンで命を守るメッセージを国民に届ける唯一の効果的な方法は、2018年にUNICEFが保健省と共同で開始した「情報コミュニケーション社会動員ネットワーク」です。南スーダンでは社会動員を行うスタッフが国中で活動しており、保健や栄養、教育、子どもの保護に関する命を守る大切なメッセージを伝えています。最も人里離れたコミュニティに情報を届けるべく、青い帽子とポンチョを身につけ、徒歩や自転車で移動する姿が見られます。

COVID-19ワクチンがヤンビオに到着したのは、今年の6月初旬のことでした。当初、ワクチンに関する否定的な噂が原因で、予防接種の列には誰一人並んでいませんでした。しかし、社会動員を行うスタッフがワクチンの利点を人々に伝えることで、すぐに変化が見られました。

コミュニティの動員を行う人々。
UNICEF South Sudan/2021/Hill
新型コロナワクチンに関する正しい情報を伝えるため、ヤンビオで活動するコミュニティの動員を行う人々。

「最初はみんな怖がっていましたが、大きな変化が見られました。正しい情報を伝えるために努力しました。」(社会動員を行うスタッフ、ジョイス・イノセント)

COVID-19ワクチンは不妊症や死亡の原因になるという噂や、悪魔が作ったものであるという話が広まっていました。コミュニティの動員を行うスタッフが戸別訪問キャンペーンを行い、ワクチンの効果を説明し、コミュニティで広まっていた噂について正しい情報を伝えると、予防接種センターに人々の列が見られるようになりました。また、社会動員活動や地域の会議に女性のリーダーに参加してもらうことで、より多くの女性が予防接種を受けるようになりました。そして、ラジオのトークショーや教会でのアナウンス、保健員を通して人々にワクチンを受けるように伝え続けたことで、人々の恐怖心も和らぎました。

正しい情報を伝えるために活動するスタッフ
UNICEF South Sudan/2021/Hill
すべての人にCOVID-19ワクチンに関する正しい情報を伝えるために活動するスタッフ。

土曜日の朝、社会動員を行うスタッフが、マンゴーの木の下で休憩しているビクトリア・マーティンさんと12人の子どもたちに出会いました。ビクトリアさんは、彼らがいつも家族に役に立つ情報を教えてくれていたため、歓迎し、一緒に座るように促しました。

「COVID-19から身を守る方法があることを知っていますか?」社会動員を行う4人のスタッフのうちの一人の、モーゼス・アルフレッドさんが尋ねました。ビクトリアさんは、そのニュースを聞いて喜び、ワクチンの接種が重要であることに同意しました。「COVID-19には、気を付けています。私は癌を患っていますし、夫は亡くなっています。子どもたちには私が必要ですから、注意しなくてはいけません。8月に次のワクチンが届いたら、予防接種を受けに行きますよ。」

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UNICEF South Sudan/2021/Hill
ヤンビオのコミュニティの動員を行うスタッフに研修を行う、予防接種拡大計画のためのコミュニケーション担当官のアニサ・チャールズ・パイテさん。

社会動員を行うスタッフは、ワクチンに関する情報を伝えるだけではありません。彼らはコミュニティで信頼されており、命を守るメッセージを伝えていることで知られています。COVID-19ワクチンに関するメッセージを伝えるには、ポスターやバナーなどの視覚的な資料が、言葉よりも効果的に働くことがあります。ヤンビオでは、COVID-19ワクチンに関する何百枚ものポスターと何千ものパンフレットが配布され、コミュニティの人々にワクチンの利点について伝えています。

感染予防方法を伝えるポスター
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ワクチンに関する正しい情報と感染予防方法を伝えるポスター。

南スーダンでは、保健省がCOVID-19ワクチンの接種を主導しており、UNICEFは世界銀行と協力し、ワクチンを適切な温度に保つためのコールドチェーンの管理や啓発活動、社会動員活動を行っています。UNICEFは、日本政府をはじめ、教育のためのグローバル・パートナーシップや英国外務国際開発省、オランダ、米国国際開発庁、国連人道問題調整事務所(OCHA)によるテーマ別基金への拠出で調達した資金によって、本活動の展開を支えています。

地域住民に伝えるためのポスター
UNICEF South Sudan/2021/Hill
ヤンビオに貼られているCOVID-19ワクチンについて地域住民に伝えるためのポスター。

*「COVAXファシリティ」:COVID-19のワクチンを複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組み。世界的危機の中、COVID-19ワクチンの調達・供給・輸送は、前例のない規模でのワクチン調達・供給であることから、世界最大のワクチン調達者であるUNICEFは、COVAXファシリティを代表して主導的な役割を担っています。

 

【関連ページ】日本政府の支援による南スーダンでのUNICEF支援事業