アフガニスタン:すべての子どものための「健康パスポート」

2019年3月17日 アフガニスタン発

UNICEF Afghanistan
2019年3月17日
アフガニスタン:すべての子どものための「健康パスポート」
UNICEF Afghanistan/2018/Fazel

2019年3月17日アフガニスタン発



アフガニスタンでは今年、推定120万人の子どもたちが誕生します。あなたが小さな赤ちゃんのいる母親や父親、妊婦だったら…そして、「赤ちゃんを大切に育てるために、子どもの健康状態をちゃんと把握したいですか?」と聞かれたら、何と答えるでしょう?きっと誰もがすぐに、「もちろん」と答えることでしょう。日本で、妊娠するともらえる『母子手帳』。妊娠や出産の経過から、小学校入学前までの健康状態、発育、発達、予防接種などの記録を記す項目があったり、妊娠・出産・育児のためのアドバイスが記載されていたりします。お母さんと赤ちゃんの状態を把握するためにもとても便利なものです。実は、この『母子手帳』を導入することで、同国の保健省とUNICEF、日本の国際協力機構(JICA)などのパートナー団体は、アフガニスタン全県ですべての家族が「お母さんと子どもの状態を把握したい」という万国共通の願いを叶えられるようにするための活動を行っています。

 

赤ちゃんの健康は家庭から

5歳になるまで、そして特に人生の最初の数週間・数カ月間、予防可能な病気から子どもたちを守り、質の高いケアを提供することが重要です。しかし、アフガニスタンの多くの家庭、特に農村地域で暮らす人々にとって、保健施設で診察や治療を受けることは容易なことではありません。アフガニスタンは、資機材や医薬品が整ったアクセス可能な保健施設が足りず、切に必要な状況です。しかし、よい保健ケアは家庭から始まります。妊娠、出産、乳幼児期、そして子ども時代の発達のすべての段階において、家族が子どもたちや母親の健康と栄養状態を管理することができる力を身につけることができるようにする支援やツールが非常に重要です。母親や家族が自分たちで健康状態をきちんと管理し、専門的なアドバイスをいつ求めたらいいのか知ることができれば、彼らの健康習慣に大きな変化をもたらすことでしょう。

“健康パスポート”

アフガニスタンは妊産婦死亡率と乳幼児死亡率の減少において過去15年間で大きな進展を遂げてきました。しかし2016年、アフガニスタンでは19人に1人の子どもが1歳の誕生日を迎える前に命を失っています。5歳未満の子どもの発育阻害率は世界で最も高い国の一つに数えられており、その数値は41%にのぼります。状況を改善するため、保健省とJICA、UNICEF、世界保健機関(WHO)、パートナー団体は、2016年1月からアフガニスタン初となる母子手帳を作るべく協力してきました。母子手帳には、母子保健のカウンセリングに必要な標準的な健康に関する情報や記録が集約されています。この手帳はコミュニティや家族、保健ケア提供者の間のつながりを深め、コミュニティの認識を向上させ、出産前から出産、出生届、産後ケア、予防接種、成長記録、乳幼児期の子どもの発達に関する女性や家族の母子保健の問題に関する重要な知識を向上させるために作られています。

母子手帳は2017年に制作され、2つの地区(カブールのミア・バチャ・コッとナンガルハル県カマで試験運用と評価が行われました。その結果、99%の母親が母子手帳を所有し、90%が使用していることが分かりました。そして、80%近くが母子手帳を持って保健施設を訪れていました。なかには、母子手帳のことを健康状態や栄養状態の記録を見せたり付けたりしてもらうために常に持ち歩く「健康パスポート」と呼んでいる母親もいます。母親たちの好反応を受け、保健省はこの事業を拡大し、3年間でアフガニスタンの34県すべてに母子手帳を配布する準備が整いました。

 

立証された効果

この事業は、既に多くの国で効果が表れています。インドネシアで行われた調査によると、母子手帳を受け取った母親とそうでない母親では、少なくとも4度の妊婦ケアを受けた母親の率が11%も違うことが分かりました。知識・態度・習慣に関する調査(KAP調査)では、母子手帳の使用により、妊娠の危険な兆候に関する母親の知識は26%(ベースライン)から73%に向上したことが分かっています。

配布に向けて

配布の準備にあたり、母子手帳について詳しく学び、コミュニティの母親や子どもたちを支援することができるようにするため、2019年1月にカブール市内で開催された訓練ワークショップにNGOや保健省の担当者が集まりました。

「母子手帳の導入には多くの利益があります」と、公衆衛生省の性と生殖に関する健康と母子保健課長のゼライカ・アンワリ氏が語ります。「母親や子どもたちにとっては、保健サービスの質の向上が挙げられます。他の国のデータによると母親たちが定期的に保健施設に訪れるようになっていますし、母子手帳では何か心配なことがあったら早い段階で診療所を訪れるように勧められています。そのため、改善された予防接種の実施や保健専門家による定期的な発育検査など、新生児の健康に直接的な影響があります。また、政府が信頼できるデータを集計できるようになるため、母子手帳はアフガニスタンの保健システムの強化にもつながるでしょう」

保健ケアサービス提供省の次官であるフェダ・モハマド・パイカン氏は、日本政府や国民、JICAの長きにわたるご支援に、次のように感謝の言葉を述べました。「母子手帳は日本で始められたものです。そして今、アフガニスタンの34のすべての件で母親や子どもたちを支えます。この事業への日本の長期的な支援に感謝しており、これからも寛大なご支援が続くことを期待しています」

 

アフガニスタン人によるアフガニスタン人のための手帳

「母子手帳の内容は他の国の経験をもとに構成されています。しかし、文章やイラストはアフガニスタンで作られました。100%オリジナルです」と、保健推進課課長のシャフィクラ・ヘマト氏が述べました。ヘマト氏は、母子手帳にはアフガニスタンの文化や社会的な背景が反映されていると語ります。母子手帳を手にする人の中には文字が読めない人もいることを考慮し、文字が読めなくても理解できるよう、UNICEFとパートナー団体は説明のイラストも記載しました。政府は事前に母親や医療関係者、文字を読むことができない人などに母子手帳を見せて検証し、彼らのフィードバックをもとに改良を行いました。この母子手帳はアフガニスタン人によって、アフガニスタン人のために作成されたのです。

2019年、カブールとナンガルハル県、バーミヤン県で母子手帳の配布が始まります。それに続き、2020年から2021年かけて他の県でも配布が行われます。分からないことや初めてのことがたくさんの妊娠期間は、適切なサポートが受けられない場合、母親たちにとって不安でストレスのたまる期間になりかねません。日本発の母子手帳は、アフガニスタンのすべての母親が自らの安全と健康を守り、すべての子どもたちが公平な人生のスタートラインを切るために大きな力となるのです。


 

【関連ページ】日本政府の支援によるアフガニスタンでのUNICEF支援事業