アルメニア: 1万人以上の難民の子どもたちに、移動診療所による支援を実施
2021年11月12日 アルメニア発

ナゴルノ・カラバフから避難した1万人の子どもたちと5,000人の妊婦が、健康的な成長と発達のために必要な健康診断を受けることができました。
2021年11月12日 アルメニア発
ナゴルノ・カラバフや周辺地域で発生した軍事衝突の開始から間もなく、クナラ・ミルゾヤンさんは娘と二人の息子と一緒に故郷の村を離れ、アルメニアのツァフカゾールに避難しました。その後数カ月間、クナラさんは家族のために生活をやりくりすることにも苦労していました。日本政府の資金援助により、今年9月にUNICEFとパートナーが支援する移動診療所が地域に訪れた際、クナラさんは1年以上ぶりに子どもたちに小児科検診を受けさせることができました。
「クラウディア先生に、8歳のマナナと12歳のセルジ、15歳のアルセンを30分程診察してもらいました。マナナは、歯科矯正医の診察を受ける必要があることがが分かりました。子どもたちに深刻な健康上の問題がないことに安心しましたが、3人の子どもたちの食生活を改善させ、発育状況を確認していく必要があるということがわかりました。また、主要な医療センターの場所や、何か問題が起こった時にはどこに行ったらいいか、きちんと確認しました。」クナラさんが話します。
2021年6月から9月にかけて、UNICEFとパートナーは、子どもたちの健康診断を通じて発育状況を確認し、さらに専門的な保健ケアを受ける必要がある子どもを特定するため、クナラさんのようにナゴルノ・カラバフから避難を強いられた何千人もの親たちを支援しました。これまでにアルメニアの5つの州(アララト州 、コタイク州、アルマビール州、ヴァイヨゾール州、シュニック州)で、ナゴルノ・カラバフから逃れてきた1万人以上の子どもたちと5,000人の妊婦が、UNICEFの移動診療所で診察を受けました。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )のパンデミックが原因で、アルメニアの保健ケアサービスは1年以上、非常にひっ迫した状態が続いています。このような状況下では、特に難民のような状態に置かれている多くの子どもたちが、置き去りになる可能があります。また、ナゴルノ・カラバフの子どもたちは医療カードや病歴が載った書類を持っておらず、アルメニア国内の保健ケア機関に全く登録されていない子どもたちも多くいます。移動診察を行うことで、これらの子どもたちの健康問題を特定し、必要な診察や医療支援を把握することができました。このプログラムを通じて、起こりうる合併症を防ぎ、パンデミック下も子どもたちの健康的な成長と発達を促進させることができています。」と、UNICEFアルメニア事務所保健専門官のリアナ・ホヴァキミヤンが話します。

「健康診断では、背骨や姿勢に問題がある子どもたちが最も多く、次いで視力に関する問題や代謝性合併症が多く見られます。健康診断がなければ地域の病院を訪れることがなかった子どもたちの健康状態を確認する、素晴らしい機会となっています。安定した収入がなく、すべてを置いて避難せざるを得なかった、困難に直面している親たちができることは限られているということに理解を示しながらも、診察時には、健康的な発育に必要不可欠な、栄養と年齢特有のニーズについて、保護者と話をするようにしています。」とラズダン医療センターのクラウディア・フォージャン医師が語ります。

「移動検診を受けることができて、とても助かりました。私たち家族にとって、娘たちを定期的に医者に連れていくことは非常に難しく、今まで診察を受けられていませんでした。何か健康上の問題が起こらなければ、最寄りの医者を探そうともしなかったでしょう。子どもたちを医者に診てもらうことができて、とても安心しました。次の診察までに、指摘された問題の予防に努めることもできます。」と、同じくナゴルノ・カラバフから3人の娘を連れてアルメニアに逃れてきたマリーナ・ハチャトゥリアンさんが話します。

「標準的な健康診断では、肝臓や心臓、肺、脾臓の機能を確認するために身体検査を行い、背骨の状態も確認します。1歳未満の子どもは、頭囲も測ります。そして、視力検査や聴力検査も行います。」とアボビャン医療センターのマリン・ババヤン医師が説明します。「移動検診の際には、地域の小児科医にも移動チームに同行してもらい、年齢に適した子どもの診察や成長のモニタリング、適切なケア、健康的な食生活について、お互いの経験や知識を交換します。また、心理社会的な健康状態にも特に注意し、必要な対応策を取れるようにしています。」
日本政府の資金援助により、UNICEFは、難民や受け入れコミュニティに質の高い、命を守る保健サービスを提供することを目指し、地域の保健ケア提供者の能力強化を続けていきます。UNICEFは今後数カ月にわたって、ナゴルノ・カラバフの軍事衝突の影響を受けるアルメニアの国境地帯の17の地域保健施設に対し、小児用蘇生器や酸素療法を行う機材、体重計、身長計など、必要不可欠な医療機器や物資を配布します。
【関連ページ】日本政府の支援によるアルメニアでのUNICEF支援事業