第37回 シエラレオネ事務所 清水真里
栄養担当官
大学卒業後、米国の大学院で開発経済学の修士号を取得。JICA海外協力隊と開発コンサルタントを経て、ボストン大学公衆衛生大学院で公衆衛生修士を取得し、現職。
JPOとしてUNICEFで活動する清水真里(しみず まり)さんにUNICEFでの仕事やこれまでのキャリアに関する5つの質問をしました。
現在、どのような仕事をしていますか。
現在は、UNICEFシエラレオネにて栄養担当官として勤務しています。担当している業務は、5歳未満児の急性栄養不良のプログラムおよび栄養分野の情報マネージメントです。国連が発行する最新の「死亡率推計に関する機関間グループ(IGME)」(2020) によると、シエラレオネは、世界で4番目に5歳未満児の死亡率が高い国です。また、栄養不良は、5歳未満児の死因の根本的な原因と言われています。
そのような状況の中で、UNICEFシエラレオネ事務所では、シエラレオネ保健衛生省とともに急性栄養不良のプログラムを実施しています。同プログラムは、近年2年間日本政府からの支援を受けています。そのため、日本政府とのコーディネーションや、プロジェクトの対象県に対し、栄養不良の子どもの治療に必要な栄養補助食品の手配や医療従事者の研修計画などを行うことも私の業務となっています。プロジェクトの進捗状況を確認するために、研修や医療施設を訪問することもあります。
その他には、シエラレオネの急性栄養不良プログラムのデータベースを管理し、情報の集計・分析を担当しています。シエラレオネでは、残念ながら栄養分野の情報マネジメントが十分に行われていない状態です。保健省の担当者とともに、毎月データを収集、データベースに反映・分析を行うことで、更なるプログラムの計画に役立てています。昨年は、このデータベースを見直し、プログラムの受益者の年齢区分や性別が分析できるようにしました。その結果、新型コロナウィルス感染症禍でも、どういった受益者がよりぜい弱であるかを明確にすることが可能となりました。
これまでのキャリアと、UNICEFで働こうと思ったきっかけを教えてください。
私はキャリアの軸を「保健・栄養」に置こうと思っていて、それだけは次の仕事を探す上でも譲りたくないと考えています。もともとUNICEFや国連を目指していたわけではなく、「保健・栄養」分野で開発途上国に貢献したいと考え、その延長線上で国の政策計画やそのエビデンスの収集に関わりたいと思うようになり、現在UNICEFで働いています。
大学生の頃から、将来国際協力がしたいとぼんやりと思うようになりました。奨学金プログラムをみつけ、学部卒業後、米国の大学院で開発経済学を勉強しました。その後、独立行政法人国際協力機構 (JICA)の青年海外協力隊の村落開発普及員として、タンザニアのNGOで、HIV/エイズ陽性者に対し、栄養向上のプログラムを担当しました。青年海外協力隊として活動していた期間に、実際にタンザニアの子どもたちの置かれた環境を目のあたりにし、保健サービスの質や母子の栄養状況改善に貢献したいと強く思い始めました。
青年海外協力隊後は、開発コンサルタント会社に就職し、JICAの保健分野の事業に計4年間従事しました。無償資金協力や技術協力、有償資金協力、調査案件を担当し、インド、タンザニア、メキシコ、ボリビア、ドミニカ共和国などの国で働きました。このコンサルタントとしての4年間で、JICAの保健分野のすべてのスキームの業務を担当し、プロジェクト運営・モニタリングや調査・分析の力を磨けたのではないかと思っています。また、同時に医療従事者ではない私が今後どのように「保健・栄養分野」に貢献していきたいかを考えるきっかけにもなりました。最後に担当したタンザニアでのプロジェクトでは、プロジェクトの結果を定量的および定質的に出すことの大切さを改めて認識する出来事があり、プロジェクトの終了後、世界銀行から奨学金を得て、疫学や生物統計学を勉強するために米国の大学院に留学し、公衆衛生修士を取得しました。在学中にJPOの合格通知をいただき、UNICEFスーダン事務所での勤務を経て、現在はUNICEFシエラレオネ事務所にて働いています。
どのような子ども時代、学生時代を過ごしていましたか。
北海道で大学まで通いました。正直なところ、国際開発や国連などについて強いインパクトを受ける出来事がなく、興味が強かったわけではなかったのですが、小中学校時代にJICA北海道に研修にきた色々な国の研修生をホームステイで受け入れる機会が多々あり、少しずつ開発途上国に興味を持ち始めました。中でもエジプトからの研修生の女性にすごくよくしてもらい、その後大学生になって、初めて一人で開発途上国にボランティアに行くきっかけとなりました。
大学や大学院で国際協力を仕事にしたいと思い始めてからは、情報収集のために参加できるイベントや研修にはできるだけ参加し、色々な方の経験談やアドバイスを積極的に聞くことにしていました。これは、実は今もしていて、やはり色々な岐路の決断などにその大切さを感じます。
大学院では、NGOや国連機関などでインターンをしたり、アメリカで実施されている低所得者に向けた食料支援サービス「フードスタンプ」でボランティアを行うなど、色々な経験をする機会がありました。2つ目の修士在学中にUNICEFスーダン事務所の栄養部門でインターンする機会もあり、栄養分野においてUNICEFで仕事をしたいと思うターニングポイントになったと思っています。
仕事の原動力ややりがいは何ですか。
家族のサポートも私のパワーとなっていますが、やりがいは、人の基盤になっている「保健・栄養」に貢献していることだと思います。モニタリングなどを通じて、プロジェクトを実施している地域を訪れ、医療施設で医療従事者や実際のプログラムの受益者である子どもや家族の声を聴く機会はモチベーションを維持するためにも重要だと思っています。例えば、UNICEFシエラレオネ事務所の栄養プログラムでは、一昨年栄養分野に関する動画を作成し、同僚と一緒に医療従事者や子どもたちの家族をインタービューする機会がありました。実際にプロジェクトの成果を受益者から直接聞くことができ、このような仕事に関われて、改めて幸運だと思いました。
UNICEFシエラレオネ事務所は、日本政府の他に、日本のコープデリ生活協同組合連合会から急性栄養不良プログラムの支援を受けていました。そのプロジェクト運営やコーディーネーションも担当していたのですが、UNICEFシエラレオネ事務所の栄養部門にいる日本人だからできる仕事もあり、コープデリ生活協同組合連合会とUNICEFの架け橋のような役割をさせていただき、やりがいがある仕事でした。プロジェクトの対象となった県も栄養不良に非常にぜい弱な県であり、ドナーである全国の生協の役職員の方向けに現地の様子の報告会をさせていただいたり、プロジェクトの進捗の報告をさせていただくなど貴重な経験でした。
UNICEFで働くことを目指す学生へのメッセージをお願いします。
私も専門的なキャリアを築づいているところであり、きっと人それぞれなので参考になるかはわかりませんが、私は次の3つを大切にしています。
1)「軸」を持つこと
やりたいと思っていることの「軸」を考えることは肝要だと思います。私の場合は、それが「保健・栄養」分野で、現在は、さらに「保健・栄養」×「エビデンスジェネレーション」を目指し、スキルを伸ばす努力しています。そのため、4月から働きながら、栄養分野のインパクト評価や医療経済分析の分野で博士課程を始める予定です。軸を決めてから、どのような勉強・スキルが必要か、どこで働くとのそのスキルを向上できるかを考え、そのスキルを習得した後でも、潮流などを把握するためにウェビナーや研修に参加したりし、知識やスキルをアップデートすることも役に立つと思います。
2)フィールド経験
私自身が、フィールド経験から色々な経験を積めたので、フィールドに出てみるのをお勧めします。在外公館での勤務、NGO、青年海外協力隊、国連ボランティアなど、色々な方法があると思います。青年海外協力隊の2年間、開発途上国の現地の方々と同じ視点から生活を共にしたことが、プログラム受益者の実際の生活を想像し、その立場になって考えるという点において、今の仕事に役立っていると思っています。異文化でのコミュニケーション能力を向上できることもさることながら、やはり開発途上国で実際にどんなことが起こっているかを自分自身が体験できるメリットがあるのではないでしょうか。1つの機関でのフィールド経験だけではなく、違う機関でフィールド経験を積むことで、新たな視点を得られると思います。また、自分の国の二国間援助のフィールド経験も役立つと思います。
3) 客観的なアドバイスをもらうこと
色々な人と繋がってキャリアのアドバイスを受けること、自分がしたいと思っている仕事で目指している機関の先輩がどのようなキャリアを積んできたかを調べることも有益だと思います。どんな経歴を積むと有利になるか、業務内容や労働環境などが自分に本当に適しているかなど考える機会になると思います。色々と頑張り、スキルや経験を積むことで、奨学金や留学、フィールド経験など良い機会に出会えると思います。その機会を逃さないようにすることが、やりたいことを実現するために重要な役割を果たすと思います。
インタビュー後記(インターン 村上和永)
保健と栄養分野における専門性や、その強みを活かしながら開発途上国のためにご自身が貢献できることを日々実践されていることがインタビューから伝わり、感銘を受けました。これからも博士号の取得を予定されているなど、常に学び続ける姿勢と強い向上心を持たれており、UNICEF職員としてのあるべき姿を感じました。