第93回 ミャンマー事務所 岡村亜也子

調達・物流担当官

大学卒業後、英国の大学院で開発学を学ぶ。マラウイでJICAのインターンを経験後、日本の民間企業に就職。その後、UNICEFウガンダ事務所に栄養サプライチェーン担当官(国連ボランティア)として派遣。JPO制度を通じ、UNICEF東部・南部アフリカ地域事務所に赴任。UNICEF物資供給センターでの勤務を経て、2024年5月より現職。

ミャンマーのヤンゴンにあるUNICEFの倉庫にて(写真右)。
UNICEF Myanmar/2025 ミャンマーのヤンゴンにあるUNICEFの倉庫にて(写真右)。

現在、どのような仕事をしていますか?

私はUNICEFミャンマー事務所で調達・物流担当官として勤務しています。ミャンマーの人道状況は、昨今の地震、災害、長引く紛争等の複合的な影響で悪化しており、690万人の子どもを含む2,190万人以上の人々が人道支援を必要としています。3月末にミャンマー中部を襲ったマグニチュード7.7の強い地震では、住宅や学校、病院などの重要インフラが深刻な被害を受け、引き続き、復興支援が必要な状況です。こうした状況の中で、最もぜい弱な子どもたちに、必要な物資やサービスを迅速かつ確実に届けるサポートをすることが、私の主な仕事です。

UNICEFはミャンマーにおいて、保健、栄養、水と衛生、教育、子どもの保護など、幅広い分野で支援事業を展開しています。私は、これらすべてのプログラムで必要となる物資やサービスの調達を担当し、子どもたちや母親のもとへ届けるための手配を行っています。基本的にはヤンゴンにある事務所で、コペンハーゲンにあるUNICEF物資供給センターや国内外の企業と日常的に連携しています。現地スタッフからの報告をもとに、現場の状況を把握しながら、どの物資がどの程度、どの地域に必要かを判断し、地元の運送会社に物資の輸送を依頼します。物資の調達から現地配送までの一連の流れを管理し、支援が滞りなく行われるように調整するのが、私の仕事です。

UNICEF物資供給センターで勤務時、ナイジェリアの医療物資用倉庫の建設現場を視察した際の様子(写真左)。
UNICEF/2024 UNICEF物資供給センターで勤務時、ナイジェリアの医療物資用倉庫の建設現場を視察した際の様子(写真左)。

これまでのキャリアと、UNICEFで働こうと思われたきっかけを教えてください。

日本の大学では国際関係を学びました。それまで海外渡航の経験はほとんどなく、大学時代に初めて東南アジアでのボランティア活動や留学に行き、海外で働くことへの興味を持つようになりました。卒業後はイギリスの大学院で開発学を専攻し、修了後には国際協力機構(JICA)のマラウイ事務所で3カ月間のインターンを経験しました。しかし、大学院を卒業した頃は、国際協力のキャリアの進め方が分からず、模索していた時期でもありました。そんな中、コンサルティング企業に就職し、クライアント企業のサプライチェーン業務改革支援を行う部署に配属されました。システム導入・改善を通じて調達・物流業務の最適化を図るプロジェクトに従事する中で、調達、生産、販売、在庫管理、配送に加え、財務などの業務分野の専門性を磨きました。

民間企業での数年の勤務を経て、開発や人道支援の現場に携わりたいという思いが強まりました。サプライチェーン分野でやりがいを持って仕事をしていたこともあり、自分の経験を活かして国際開発の分野で貢献したいと考えるようになり、調べていく中でUNICEFの活動に関心を持つようになりました。UNICEFは幅広い分野における支援を実施していて、国際機関の中でも調達する物資の量も種類も多いことを知りました。これまでのサプライチェーン分野での経験を活かせるのがUNICEFなのではないかと感じたこと、そして何よりも、子どもたちの可能性を広げるというUNICEFの使命に深く共感したことが、UNICEFで働きたいと思った最大の理由です。

そこで、外務省の平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に参加し、同事業を通じてUNICEFウガンダ事務所に国連ボランティアとして派遣され、栄養物資のサプライチェーン管理を担当しました。さらに、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)制度を通じてUNICEF東部・南部アフリカ地域事務所に赴任しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大時には、同地域事務所が管轄する21カ国の事務所に対して関連物資の調達支援を実施しました。その後、コペンハーゲンのUNICEF物資供給センターへ異動し、契約担当官として、COVID-19の治療に必要な酸素治療の医療機器の調達や契約を担当しました。昨年5月からはミャンマー事務所での業務に従事しています。

東部・南部アフリカ地域事務所勤務時、ザンビアでワクチンのコールドチェーン・システムを視察した際の様子。
UNICEF ESARO/2021 東部・南部アフリカ地域事務所勤務時、ザンビアでワクチンのコールドチェーン・システムを視察した際の様子。

民間企業や国連ボランティアなどの仕事を経てUNICEFに入職していますが、これまでのご経験の中で、現在の仕事に活かされていることはありますか。

民間企業と国際機関では環境は大きく異なりますが、調達・物流という専門領域で培った知識や経験は、現在の業務に直接活かされています。また、コンサルティング企業で身につけた物事を体系的・論理的に整理し、解決へ導く力は、UNICEFでも大いに役立っています。データを分析し、分かりやすい資料にまとめて説明し、解決に結びつける一連の流れは今も仕事の基盤になっています。

国連ボランティア時代には、上司や経験豊富なスタッフからUNICEFの支援事業や必要となる物資、そして、サプライチェーン組織や管理構造について多くを学びました。国連ボランティア時代に学んだことはUNICEFで働くにあたり礎となっており、その上で、日々実務を通じて学びを深めています。

 

調達・物流というUNICEFの活動に不可欠な仕事をする中で、どのような難しさや、やりがいを感じますか?

 

調達・物流の仕事は常にコスト削減が求められるため、限られた予算のなかでどの物資をどこまで備えるか、難しい判断を迫られます。多くの予備を確保すれば迅速に支援できますが、倉庫の維持費がかかります。逆に少なければ必要な支援が届きません。さらに洪水などで道路が封鎖されることもあるため、物資を国内のどこに配置するかも大きな課題です。また、調達時の価格交渉も重要な業務です。日々変化するマーケット・物流環境を考慮し、サプライヤーの見解にもしっかりと耳を傾けつつ、双方が合意可能な、UNICEFにとって最善の条件を探ることが鍵となります。

子どもたちや母親に物資が届き、現場でしっかり活用されている様子を直接見たり、チームから写真や動画で報告を受けたときに、この仕事をしていてよかったと心から感じます。特にミャンマーのような紛争下にあり自然災害にも見舞われやすい国では、緊急事態が発生することも多いです。そして、緊急事態下で最初に求められるのが物資による支援です。それを迅速に届けられたという報告を受けると、とても嬉しく感じます。

UNICEF物資供給センターと地域事務所、現地と多様な場所での経験を積んできたからこそ、今こうしてミャンマーで流動的な現場の状況を踏まえながら調達・物流に取り組めることに、難しさと同時に面白さとやりがいを感じています。

東部・南部アフリカ地域事務所勤務時、ザンビアの診療所を視察した際の様子。
UNICEF ESARO/2021 東部・南部アフリカ地域事務所勤務時、ザンビアの診療所を視察した際の様子。

UNICEFや国連の仕事に関心のある若い世代へのメッセージをお願いします。

UNICEFや国連で働くことは、社会課題に取り組むための一つの手段にすぎません。大切なのは、まず自分がどのような社会課題に関わり、どのように貢献したいのかという目的を考えることです。その上で、アンテナを張って自分の興味のあることに積極的に取り組んでみてください。私自身、大学生の頃から開発や人道支援に関心はありましたが、まさかサプライチェーンの分野で働くことになるとは想像していませんでした。キャリアは必ずしも計画通りには進みませんし、偶然の出会いや経験が道を開いてくれることも多いと思います。

もちろん、UNICEFや国連を目指して戦略的にキャリアを描くことも素晴らしいことです。しかし、一つのプランにとらわれすぎず、偶発性を楽しみながら自分の関心を深めていくことが大切です。その積み重ねの先に、それぞれに合った最良の社会課題との関わり方が見つかるのではないかと感じています。

 

インタビュー後記(インターン 大川愛里)

「偶発性を楽しみながら、自分に合った社会課題との関わり方を見つけていく。」と笑顔で語ってくださった岡村さん。大学時代の就活の話なども交えながら、専門性を得ることで主体的にキャリアを描き始めた時のことも話してくださり、伺いながら、点と点がつながって線になっていく感覚を覚えました。大学まで海外経験がなかったとのことでしたが、マラウイでの3カ月間のインターンで開発途上国での生活にも特に不安を感じなかったことから、ウガンダでの国連ボランティアにも前向きに挑戦できたそうです。

想像もしていなかった未来を描いていくため、目の前の仕事に真摯に向き合いながら自分の興味のあることに飛び込み、積極的に取り組む姿勢の大切さを、岡村さんから教えていただきました。