ウクライナ:避難を強いられる人々に支援と希望を届ける移動支援チーム
2022年8月18日 ウクライナ発

2022年8月18日 ウクライナ発
ボフダン・ルデンコさんは、紛争がいかに悲惨なものかを、身に染みて知っています。だからこそ、ボフダンさんは、ウクライナで何千人もの生活を立て直す手助けをするチームの運営をサポートしています。
2月に紛争が勃発し、ヘルソン州の自宅から避難を余儀なくされた元心理学者のボフダンさんは、「人々が国内避難民の申請をしたり、社会的、医療的、心理的支援を受けるためのサポートをしています。避難せざる得なかった人々は、しばしば睡眠障がいや不安、パニック、恐怖に悩まされています。彼らは親族や友人の命が奪われ、家が破壊され、悲しみに暮れています。簡単な会話でも、心を癒す第一歩になります。」と話します。
UNICEFFの支援を受け、パートナー団体の国際慈善団体「ウクライナ公衆衛生財団」は、戦闘の末、家や仕事も社会的保護も受けられなくなった国中の何百万人もの国内避難民を支援する移動チームを立ち上げました。
心理学者やソーシャルワーカー、弁護士、医者で構成される合計50の移動チームが活動しています。そのうち4つチームが、ボフダンさんが避難後に再び戻ってきた、ヴィーンニツァ州の人々を支援しています。

「以前は心理学者として、財団と一緒に仕事をしていました。」ボフダンさんが語ります。「自分にとっても、必要とされていると感じ、立ち直る機会になっています。人々が必要としているのは経済的な支援だけではありません。『一人じゃないんだ』と感じたいときもあるのです。」
ボフダンさんは今日、ジュメリンにある図書館で、ミコライーフやマリウポリ、ハルキウ(ハリコフ)、オデッサ、ルハンシクの自宅から逃れてきた何十人もの人たちと面会する予定です。

そのうちの一人、40歳のテティアナさんは、3月に夫と3人の子ども、そしてペットと一緒に自宅から避難しました。避難後に父親を失い、母親はまだミコライーフで暮らしています。
「子どもたちは、戦争が始まったということを理解していませんでした。私も予期していませんでしたし、信じてもいませんでした。私たちはまず、スニグリフカに向かい、寒い地下室に隠れていました。靴を履いたまま寝ていました。光が入らず、食料もありませんでした。」と、テティアナさんが語ります。
その後、テティアナさん一家はヴィーンニツァ州に仮の住まいを見つけました。障がいのあるテティアナさんの娘は、移動チームから医療支援を受けています。ようやく子どもたちは再び生活を取り戻しましたが、恐怖が消えることはありません。
「散歩中にサイレンが鳴ると、娘たちは、『また走るの?』と聞くのです。これは戦争であり、どれほど深刻な事態になっているか、子どもたちはまだ理解できていません。」

ハルキウから逃れてきた二人の娘の母親のナタリア・カメネワさん(42歳)も、子どもたちが心の中に安らぎを見出せるようにするためのアドバイスを受けに来ました。
「娘たちはこの地で友達ができました。コミュニケーションをとって、楽しく生活しています。ストレスから早く回復できるようになりました。」と、ナタリアさんが語ります。
ナタリアさんは、娘たちは長い間、飛行機やミサイルの音を聞くと取り乱していたと話します。恐怖の記憶は、今でも彼女たちを苦しめています。
「世界の人々に私たちの生活環境を知ってもらい、力を貸してほしいです。」

日本政府の資金協力で、現在ウクライナでは、UNICEFが支援する50の移動チームが活動しています。それぞれのチームは、心理学者やソーシャルワーカー、弁護士、医者で構成されており、一度で複数分野への緊急支援を受けることができます。精神的な応急処置や支援、法律相談、社会的支援、医療支援、人道的支援キットや情報の提供などの支援を行われています。
ボフダンさんは、自身の経験を生かして、他の人の力になりたいと考えています。
「同じ経験をしたからこそ、『あなたの気持ちが分かりますよ』と、国内避難民の人たちに寄り添うことができますからね。」と、ボフダンさんが語ります。
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