エリトリア:「はだしの医者」プログラムで農村部のコミュニティを基盤とする保健サービスを強化

2019年8月1日 ガシュ・バルカ州バレンツ(エリトリア)発

UNICEF Eritrea
2019年8月01日
研修を終えた25人の「はだしの医者」たち
UNICEF Eritrea/2019/Tadese

2019年8月1日 ガシュ・バルカ州バレンツ(エリトリア)発

エリトリア保健省はUNICEFの支援のもと、エリトリアの遠隔地のコミュニティで最も困難な状況に置かれている人々に基本的なサービスを提供するため、25人の最前線で活動する保健員に6カ月の研修を実施しました。

アミナ・ヌルフッセン保健大臣 が6カ月の研修を終えた25人の「はだしの医者」となる卒業生たちに祝辞を述べ、修了証を手渡しました。その様子を親たちや家族が喜びに満ちた表情で見守っています。

「皆さんは今や保健制度の一員であり、政府は皆さんを誇りに思っています。」と、ヌルフッセン保健大臣が話します。「私たちは皆さんに大きな期待を寄せています。最も支援を必要としている人々にサービスを提供するため、それぞれのコミュニティで一生懸命働いてくれることでしょう。」

バレンツにある看護助手養成学校の会場には、大臣とともにガシュ・バルカ州知事、社会サービス局長、保健省の政策・人事局長代理、ガシュ・バルカ州や北紅海州、アンセバ 州の医務官、UNICEFエリトリア代表のシャヒーン ・ニロファーやUNICEFのスタッフが出席しました。

プライマリ・ヘルスケアのサービス提供における重要な戦略として、エリトリア政府はコミュニティを基盤とした保健ケアに重点を置いています。UNICEFの支援を受け、「はだしの医者」となる最初の研修生たちに行われたこの研修は、遠隔地のコミュニティの保健サービスの提供に貢献するものです。「はだしの医者」たちは、現在移動診療所がサービスを提供しているエリトリアの17地区にある450のコミュニティを超え、さらに活動に力を入れていきます。

最初の卒業生となる25名は、アンセバ州や北紅海州、ガシュ・バルカ州の十分な保健サービスがないコミュニティの人々やリーダーが参加する中で選ばれました。これらの州は北と西にスーダンと国境を面しており、最も厳しい環境下に置かれ、干ばつに苦しむアフリカの角も含まれてます。

 

卒業生に修了証を授与するアミナ・ヌルフッセン保健大臣
UNICEF Eritrea/2019/Tadese

アミナ・ヌルフッセン保健大臣は、北紅海州ナクファ出身のアミナ・オウメルに修了証を授与しました。オウメルは勤勉さと11年生を終えた女性候補者の中で最も優秀であることが評価され、コミュニティの人々によって抜擢された2人の女性の卒業生のうちの1人です。

「研修を受けることができ、本当に感謝しています。コミュニティを支え、人々に適切な助言をしたり命を守ることができる知識を得ることができて光栄です。」
―アミナ・オウメル・スレマン

この全寮制の研修では、看護助手養成学校での4カ月間の学習の後、指導者のもとバレンツ病院やその他のプライマリ・ヘルスケア施設で2カ月間の集中的な実習を行いました。また、保健と栄養に関する予防や促進、治療ケアの一連の研修も行われました。

これには応急処置や疾患の特定と治療ケア、必要に応じた保健施設への搬送、予防接種を含む保健や栄養、環境に関するキャンペーンへの住民の動員、妊婦への必要な産前ケアの提供、保健施設での健診と出産の促進が含まれています。さらに、産後の母親と新生児への保健サービスや、発見されないことが多い急性呼吸器感染症 の子どもの結核の検査など、一般的な子どもがかかりやすい病気の治療ケアに関する研修も行われました。

UNICEFは6カ月の研修に加え、さらにロジスティクスや基本的な医療器材や物資の支援を行います。

「体温計や呼吸数を測定するタイマーといった、一般的な病気を発見して治療ケアするための機材や、必要な人に配布できる3カ月分の薬が提供されます。」と、アミナ・オウメル・スレマンが誇らしそうに話します。

卒業生はデータ収集のための文房具や、子どもがかかりやすい病気を特定し、治療ケアする際に参考にできる研修マニュアルを受け取ります。

「はだしの医者」たちは移動診療所が支援する地域を超えて最も遠隔地にあるコミュニティに派遣され、遊牧民や半遊牧民のコミュニティを含む農村部の人々に支援を行います。彼らの活動は保健ケアに関するコストの削減やプライマリ・ケアの提供の力になります。そして、エリトリア政府が今後3~4年以内にこれらの地域に保健施設の設置を計画しており、施設ができるまでの一時的な移行期間の対応を行うことができます。

研修の卒業生やパートナー、政府関係者、UNICEFの職員たちの集合写真
UNICEF Eritrea/2019/Tadese
研修の卒業生やパートナー、政府関係者、UNICEFの職員たち。

「『はだしの医者』たちは実践的な研修で自信をつけることができました。質の高い保健サービスを人々に直接届けることは、研修の成果をコミュニティに還元する絶好の機会です。保健施設ができるまでの措置として、このプログラムは誰も取り残さず、エリトリアのすべての子どもと女性のための保健と栄養を改善する力となるでしょう。」と、UNICEFエリトリア事務所代表のシャヒーン・ニロファーが卒業式の閉会の挨拶を述べました。

卒業生はそれぞれの地域の医務官に委ねられ、正式なプロセスの後、各地域に派遣されます。保健省は2019年の研修に参加する計100人の候補者の選考を進めているところです。「はだしの医者」たちには、地理的に最も厳しい場所でも保健サービスを提供できるよう、制服とラクダが支給されます。

「はだしの医者」プログラムを通じてコミュニティを基盤とした保健ネットワークやサービスを強化するための日本政府からの資金協力に感謝したします。

「はだしの医者」という言葉は、1930年代の中国で、裸足で働くことの多い農民が医療や医療補助の研修を受け、都市で研修を受けた医師がいない農村部で保健ケアを提供していた背景から生まれました。彼らは基本的な衛生環境を整え、病気を予防するための保健ケアや家族計画を促進し、人々がかかりやすい病気の治療をしていました。「はだしの医者」プログラムは、1978年にWHOから「遠隔地での医療サービスの不足を解決した成功例」として賞賛されました。

 

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