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UNICEF日本人職員インタビュー

 

第29回 マラウイ事務所 子どもの保護担当官 中谷菜美

© UNICEF Malawi/2019/Nami Nakatani

 筑波大学国際総合学類卒業後、日本赤十字社にて5年勤務したのち、英国キングス・カレッジ・ロンドンにて子どもの保護、子どもの権利を学び、国際子ども学修士号取得。UNICEFウガンダ事務所でのインターンを経て、2019年2月より、子どもの保護官(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPO) としてUNICEFマラウイ事務所にて勤務。

暴力から子どもたちを守る

(パロンベ県チレニ避難所 にある「子どもにやさしい空間」と呼ばれる安全な遊び場で遊ぶ子どもたち)

201962日マラウイ発

20192月から、子どもの保護担当官としてUNICEFマラウイ事務所で働き始めました。そしてマラウイに到着した3週間後、87,000人が避難を余儀なくされた大規模な洪水が発生しました。

洪水発生後、マラウイ南部の洪水の影響を受けた地域に2度足を運びました。洪水直後の1度目は状況把握を行い、2度目の425日から59日には現場で支援活動を行いました。

緊急時、子どもは暴力やストレスといった非常に大きなリスクにさらされます。主に学校や教会に設置された何カ所かの避難所を訪問しました。時には子どもたちが避難所となった教室にマットや毛布、蚊帳のない中で寝ていることもありました。ある女の子は、文化や生活スタイルの異なる他の村から来た人たちと一緒の場所で寝るのは居心地がよくないと言っていました。また、夜間に教室が施錠されていない避難所もあり、子どもたちは人身売買や暴力、特に若い女の子や女性にとっては性的な暴力の危険性にさらされているところもあります。

UNICEFのパートナー団体であるセーブ・ザ・チルドレンによって行われている、影響を受けた子どもたちのための心理社会的支援活動の様子を確認するため、チクワワ県にある避難所の一つを訪問しました。「ヒーリング・スルー・アート(絵画療法)」と呼ばれる事業を行っており、子どもたちが洪水の際や洪水後に経験した恐怖などを絵で表現します。

15歳の女の子、ルチア(仮名)は、描いた絵(下の絵)をもとに心の傷を打ち明けてくれました。「これはわたしと男の人。この人がわたしに一緒に寝るように言ってきました。なんとか逃れることができたけど、本当に怖かったです。」

基本物資が不足している中、食料や学用品などと引き換えに子どもたちや10代の女の子たちがこのような要求を受け入れてしまう事態が発生しています。これは子どもたちにとって生き残るための対処行動であり、児童婚もまた、女の子や家族にとって同様です。

(チクワワ県の15歳の女の子が描いた、男性に性交を求められたときの恐怖を表現した絵)

原則としてUNICEFは、子ども支援に関する既存のメカニズムを尊重し、それらを強化することで子どもたちのニーズへのより良い対応を図っています。そうすることで支援の持続性が担保できるからです。今回の災害では、すべての避難所で基本的な子どもの保護システムを利用できるようにすることを最優先に、子どもの保護支援に取り掛かりました。私は12の避難キャンプを訪問し、子どもの保護支援を担当するスタッフが虐待や搾取、ネグレクトなどの問題や子どもの生活状況をきちんとモニタリングしているかを確認しました。

そして、子どもたちが遊び、学び、友達と交流し、心理社会的支援を受けることができる「子どもにやさしい空間」があるか、暴力や搾取などの被害を通報・相談できる仕組みが整備されているかも確認しました。例えば、避難キャンプ委員会や子どもの保護委員会、母親のグループなどがそうした仕組みに挙げられます。ほかにも、虐待や性的暴力などのケースを通報・相談できる通話料無料の電話窓口の設置に向けた政策提言も行っています。なぜなら、コミュニティの人々は、警察などの機関に対して事件を通報せず、内部で解決しようとすることがあるからです。

(ゾンバ県にある避難所で、子どもの保護システムに関してコミュニティの人々に確認している様子)

子どもたちが時間を過ごすための「子どもにやさしい空間」がないことが分かった場合には、UNICEFは県の社会福祉事務所に設置を促し、必要な道具を提供しています。428日に同僚と一緒にンサンジェ県のチルウェカキャンプを訪問した際には、「子どもにやさしい空間」もレクリエーションのための道具もなく、大勢の子どもたちが日中に暇を持て余していることがわかりました。そのため、サッカーボールやバレーボール、縄跳び、ボードゲーム、絵を描くための黒板とチョークなどの多様な遊び道具の入ったキットを持っていくことにしました。それと同時に、避難所の最寄りの「子どもにやさしい空間」にもこのキットを提供することにしました。そうすれば、避難所の子どもたちも「子どもにやさしい空間」を利用することができ、避難所が閉鎖された後もこの場所に子どもたちが集まることができるからです。

「子どもにやさしい空間」で支援を行っているチャールズは、「避難所の子どもたちもきちんと活動に参加できるようにしていきます。現在、約105人の子どもたちが参加していますが、レクリエーションキットのおかげで、これからはもっと多くの子どもたちが参加すると思います。子どもたちはこのキットで遊ぶのを楽しみにしているはずです。」と話しました。

心理社会的支援などを必要とする子どもや虐待のリスクにさらされている子どもを特定するうえでも、「子どもにやさしい空間」は重要な役割を果たしています。チャールズは、「子どもたちがどのように友達とコミュニケーションをとっているのか観察し、個別の相談や支援が必要な子どもたちを見つけています。」と説明しました。「子どもにやさしい空間」を設けることは、特に子どもたちの心理社会的なニーズが増す緊急時には非常に重要です。

マラウイ南部を直撃したサイクロン・イダイによる大洪水から2カ月が経つ中、多くの人々が彼らの暮らすコミュニティで生活の再建を始めています。しかし、子どもたちは経験した喪失感や恐怖を乗り越えるため、今もなお心理社会的支援を必要としています。また、基本物資の不足や人々の間の緊張状態により、コミュニティに戻った後でも暴力のリスクが依然として高い状態にあるため、コミュニティの子どもの保護システムの強化が必要です。

UNICEFマラウイ事務所は様々なドナーから資金協力を受け、早期復興のための支援活動をさらに加速させています。 日本政府は子どもの保護と10代の女の子と女性のための月経衛生に関する支援に25万米ドルを提供して下さいました。UNICEFは今後も暴力から子どもを守り、子どもたちが日常を取り戻せるよう、支援を続けていきます。

【4月29日】日本政府、マラウイでの洪水被害に対しUNICEFとWFPに計125万米ドルの支援を提供

日本政府によるマラウイのUNICEF支援事業

 

 
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