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UNICEF日本人職員インタビュー

 

第21回 中東・北アフリカ地域事務所 プログラム専門官 草道裕子

(中東・北アフリカ地域事務所の草道裕子プログラム専門官。各国政府およびNGO団体とパートナーシップを組み、資金供与をするための合意書や手続きにかかわる業務に携わる。「人事や資金調達のバックグラウンドを持つ人を含め、幅広い分野で日本人に活躍してほしい」)

2019年2月8日 ヨルダン発 

赤十字から国連へ

大学卒業後、日本赤十字社で7年間勤務しました。主な役割は人材を海外に派遣して事業を管理することで、出張はあるものの海外に駐在するということはありませんでした。各国赤十字社は草の根のボランティア団体で、どのようなプロジェクトもボランティアの育成から始まり、コミュニティを基盤とした活動を行います。出張で現場の活動を垣間見るにつれ、より直接的に現地での支援業務に携わりたいと思い、国連ボランティアを通じて国連児童基金(UNICEF)でのキャリアをスタートさせました。国連機関で働いてみて面白いと思った点は、国の政策に影響を与えることができることです。UNICEFでは現地の政府機関とその国における事業や年間計画について話し合い、政府の合意の上で事業を進めていきます。例えば、バルバドスのカリブ海諸国を管轄する事務所にいた際は、仕事を始めたばかりの頃から比較的大きな仕事を任され、「ライフスキルの習得を目的とする科目をカリブ諸国の小中学校のカリキュラムの必須科目とする」という地域内各国の合意の具体的な実施を政府高官と共に取り組みました。子どもの権利を守るというUNICEFの理念をもとに、政策に関与することができる点が特に面白いと感じました。

先進国のUNICEF事務所で働くということ

スワジランドでの勤務後は育児もあり日本に帰国し、しばらくUNICEFから離れた後、UNICEF東京事務所の空席公募に応募しました。オペレーションマネージャーという主に管理部門の横断的な統括に関わる仕事で、それまでの経験とは全く分野の違う仕事でした。例えば、日本政府が主催する国際会議にUNICEF事務局長が参加する際は、UNICEF本部と連携をとりながら、来日の準備をサポートしました。事務局長が国際会議の場や日本の国会議員の方々と面会する際に「UNICEFとして何を発言するのか」というのはとても重要です。そのため、説明資料の作成等にはかなりの時間をかけたことを覚えています。

開発途上国にある事務所とは違い、UNICEF東京事務所はニューヨーク本部直轄の国連機関事務所として、日本政府からの資金協力に関する調整を行っています。通常、日本のような先進国で集めた資金は途上国におけるプロジェクトに使われます。しかし、東日本大震災が起きた際には、当時のUNICEF事務局長の決断により、約半世紀ぶりとなる日本国内での支援活動を行うことになりました。支援活動の主体となった日本ユニセフ協会に、海外のUNICEF事務所から10名を超える 保健や子どもの保護、物流の日本人専門官を派遣。UNICEFの世界各地での自然災害への対応の豊富な知見や経験を活かした活動を行いました。

その後オペレーションマネージャーとしてマレーシアに赴任したのも、とても興味深い経験でした。マレーシアは目覚ましい経済成長を続けてきた国で、既に国連の資金援助が必要な国ではありません。しかし、依然として貧富の差が残っています。例えば農村部では児童婚や子どもへの暴力も見受けられるなど、子どもの権利や子どもに手厚い社会政策、障がいを持つ子どもの支援等について、UNICEFの経験や知識が求められています。マレーシア国民から募金を集って自ら必要な資金を集めながら、UNICEFとして政策提言でどのように付加価値を創出して存在感を示せるかということを日々考えながら勤務していました。

地域事務所ならではの難しさ

現在勤務している中東・北アフリカ地域事務所では、政府と仕事をすることの難しさを日々痛感しています。例えば、リビアやイエメンなど、紛争により国家自体が脆弱になり分断が起きているような国においては、政策協議をする相手を見極めることすら困難な場合があります。政治的混乱などが続く中で、被援助国政府と直ちに良好な関係構築をすることは容易ではありません。しかし、UNICEFの使命である子どもの権利の保護を遂行するため、私たちにはどのような政府とも信頼関係を構築する責務があると考えています。政府機能が脆弱な地域では、緊急支援には現地のNGO団体とのパートナーシップも欠かせませんが、治安上の制約から選択肢が限られている状況も多々あります。支援をすることにかかわるリスクをとる覚悟があるか、支援しないことでどれだけの人命が危険にさらされるのかという選択は、非常に難しい場合があります。

中東・北アフリカ地域事務所は、各国の国事務所の優先事項を尊重しながら、難民、移民など地域共通の課題にどう対応するか、各国が必要とする資金がすべての分野で集まっているかなど精査しながら、後方支援をしています。私が直接担当している業務は、各国政府およびNGO団体とパートナーシップを組み、資金供与をするための合意書や手続きにかかわる業務で、UNICEFの資金が目的にそって効率的に活用され、不正に流用されたりしていないか監査しています。紛争の続く中東地域には先進国の政府が緊急支援のために資金援助をしており、現在世界で一番資金規模が大きい地域となっています。危険地域でプロジェクトを実施する人的なリスクもさることながら、それをUNICEFとして十分にモニタリングし、資金や救援物資の流用が起きないようにリスクを管理しなければならない責任もまた重大といえるでしょう。さらに、緊急支援をいずれ復興、開発につなげていくために、地元の政府機関やNGO団体のプロジェクト管理能力を育てていくことも視野に入れて、各国事務所とともに協力して仕事を進めています。

2児の母として

2人の子宝に恵まれ、UNIEFを離れていた期間も含めてふたりとも日本で出産しました。海外での子育ては大変だと思われがちですが、実際には日本にいた時の方が大変だと感じましたね。日本では保育園に迎えに行く時間が決まっていて、毎日仕事が時間通りに終わるとは限りません。電車の遅延などもあり、かなり大変でした。また、日本だと職場から自宅までの距離が遠く、通勤時間が海外駐在時より長いのが子育て中の身にはつらいことでした。日本だと、一般的にお手伝いさんを雇うこと自体にまだ抵抗がある保護者の方も多くいらっしゃると思いますが、海外に駐在していれば、仕事から帰宅するまでの間にお手伝いさんに子どもの面倒を見てもらうことができます。海外でもお手伝いさんにすべてをやってもらうわけではなく、どこの部分をサポートしてもらうかは、それぞれの家庭次第。例えば、自分が料理をしている間、子どものそばについていてくれるだけでとても助かります。現在は子どもが学校から帰ってきてから私が帰宅するまでの数時間の間だけ、お手伝いさんに来てもらっています。海外で暮らしている方や駐在されている方全員が子育て中にお手伝いさんの力を借りているわけではありませんが、そういう選択肢があるということはとても助かっています。

またUNICEFは女性にとって働きやすい機関だと思います。フレックスタイムを利用することも可能ですし、急に 子どもが熱を出した時なども早退したり、自宅から仕事をしたりすることに理解が得やすいです。 女性の上司も多く、職場でのサポートという面では充実しています。

国連で働くことを目指している皆さんへ

国連では次のポストが確約されているわけではないので、人生の計画が立てにくいという不安定さもありますが、やはり魅力的なのは、任地が変わるたびに新しいことを勉強できることだと思っています。時代の流れに沿ってUNICEFの重点分野も変わってくるので、知的な関心も広がりますし、研修の機会も充実しているので恵まれていると感じます。

人事や資金調達のバックグランドを持つ人を含め、幅広い分野で日本人に活躍してほしいですね。このようなスキルはUNICEF以外の国際機関でも通用する経験だと思うからです。国連での仕事を得る上で、いわゆる「正解」の道は存在しません。私自身のキャリアを振り返ってみても、ただタイミングがよかったと思うことも多々ありました。

国連では一つの専門性を持って活躍されている方も多くいますし、多様な経験を活かして職務にあたっている方もいます。例えば私の現在の仕事は、プログラムとオペレーションの両方を経験してきたからこそ掴めたポジションだったと感じています。皆さんも最終的にどのような分野や職種で活躍したいかというところから考え、専門性を極めるのか、あるいは多様な経験を活かしてマネジメントを目指すのか判断なさるのが良いかと思います。

<ヨルダン事務所 オペレーションマネージャー 草道裕子>

日本赤十字社にて7年間勤務。UNICEFバルバドスのカリブ地域諸国事務所にて国連ボランティアを2年間務めた後、イギリスの大学院で開発学を専攻。ジュニア・プロフェショナル・オフィサー(JPO) 制度によりUNICEFスワジランド事務所でプログラム担当官を経て、UNICEF東京事務所で4年間オペレーションマネージャーを務める。その後オペレーションマネージャーとしてUNICEFマレーシア事務所に赴任後、2015年より現職。

【参考ページ】

東日本大震災から3カ月間のユニセフ・日本ユニセフ協会支援活動

 

 
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