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UNICEF日本人職員インタビュー

 

第17 回 コンゴ民主共和国事務所 保健専門官 武居利恵

© UNICEF/PPD Tokyo/2017/Chizuka
赴任前の準備で大切にしているのは、現地に行ったことのある人から直接話を聞くこと。「日本で手に入る情報は限られている。先入観を持たず、現地でいろいろな情報を吸収することを心掛けています」=2017年10月3日、東京都港区
© UNICEF DRC/2015/Takesue
妊産婦に配布されているキット。ガーゼや薬などが入っている

2002年、中央大学総合政策学部卒業後、財団法人を経て、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊としてネパールに赴任。2008年、東京大学大学院で修士号(国際保健学)取得後、同年9月にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてUNICEFウガンダ事務所で勤務。タンザニア・ザンジバル地方事務所を経て、2014年6月から現職。

命を救う2つのキット

UNICEFコンゴ民主共和国事務所の保健の部署で保健システム強化に携わっていて、子どもや妊産婦向けに薬などを入れたファミリーキットの配布を担当しています 。 キットは、5歳以下の子どもたち用と妊産婦向けのキットの2種類です。現在では、全国で516の保健区のうち44保健区で、140万人の子どもたちと142000人の妊産婦にキットが届けられています。キットの中に入れる薬の調達、地方への発送手配、データの管理、フォローアップなどをしています。

妊産婦用キットには、分娩時に必要な手袋や薬が入っています。出産のために保健センターに行っても薬やモノ自体がないので、病院に妊婦がキットを持参できる仕組みになっています。 コンゴ民主共和国では妊産婦死亡率はかなり高く、10万人につき846人が妊娠・出産で亡くなります。子どもの死亡率は過去10年間で下がってきていますが、妊産婦死亡率はなかなか下がりません。妊産婦用のキットによって、より安全な出産ができ、経済的な負担も減らせるという狙いがあります。

子ども用のキットには、下痢になった時のための 経口補水液や解熱剤、栄養素などが入っています。例えば5歳未満の子どもが3人いる世帯には 、キットを3個、年4回配布します。1年間で1人の子どもが下痢にかかる回数やマラリアにかかる回数などを計算して各家庭に配布しています。コンゴ民主共和国は国土が広大な上、整備された道が少ないのでモノが流通しにくく、人も簡単に移動できません。キットの配布が遅れたりするなどの難しい点もあります。

データで問題点を洗い出す 

私が取り組んでいることの1つに、国全体の保健制度強化が挙げられます。システムがうまく機能している場合は病院や保健センターなどを強化すれば医療機関などの使用率が上がるのでよいのですが、コミュニティーで行政がきちんと機能していない場合は基礎サービスが届きにくいという現状があります。

例えば、予防接種のキャンペーンをする場合、公的なデータを使います。しかし、コンゴ民主共和国で最後になされた国勢調査が30年前のものなので、村に実際に何人住んでいるのかはっきりしません。データ自体がない村が多かったり、あったとしても質がよくないという状況でした。様々な資料等を使って人口を推定したりキャンペーンのたびに人数を数えたりなどして、データをできる限り国や州と共有しました。

また、コミュニティーレベルでデータ管理を改善するのも重要ですが、州レベルでも予防接種の人数や栄養失調の子どもの数、何人にケアを届けたかなどを集計し、国レベルに送り、改善を図りました。この州レベルでのデータをもとに201516年からモニタリングを実施しています。住民が病気になったとしても医療機関をなかなか受診しないなどの問題点があった場合、どこに大きな原因があるのか洗い出し、どの部分を変えていくべきか分析するためです。原因を突き止めるために3つの要素をグラフにします。1つめはモノやサービスの提供が十分か、適切か、2つめは「ジオグラフィカル・アクセス」という、地理的にそこまで行けるかどうかという点、3つめはサービスを受けた場合サービスの質が良かったかどうか―です。この3つをグラフにし、大きく差があるところに、問題があると考えます。

分野を超えた取り組みも行っています。コミュニティーワーカーに人口の推移など村の状況を把握してもらうのですが、先ほど言った通り国勢調査がこの30年間行われておらず、子どものデータがありません。 何人の赤ちゃんが生まれたか、誰が生まれたか、戸籍登録をしていないのでわからないのです。なので、出生登録の用紙をファミリーキットの中に入れるなどの工夫をしています。また、予防接種や栄養に関する取り組みは今までそれぞれ違うコミュニティーワーカーが行っている場合もありました。しかしそれでは効率が悪いので、コミュニティーに即した、包括的な支援を効率よくできる組織をつくるために、住民の中から信頼できる人を選んでもらうようにしました。隣村などを含めた、少し上の地域レベルで会合を開き、それぞれからデータを集めます。データを出してない人がいればフォローアップをしてもらいます。この構造が持続できるように本当に信頼できる人を選んでもらうのが重要です。

さまざまな視点を持つ

ウガンダ事務所時代には 妊婦健診に来た女性にエイズ検査をしてもらい、携帯電話のショートメッセージ機能(SMS)を使って陽性の人のフォローアップする事業の立ち上げに携わりました。患者リストをもとに患者の電話番号を登録をして、その人に合わせたメッセージを送ります。例えば、各患者の健診スケジュールに合わせて、健診のリマインダーを送っています。

アフリカは、日本と比べると自殺が圧倒的に少ないんですね。興味があったのでその理由をコンゴ人の同僚の医師に聞くと、「普通の生活をしていくだけでたくさんの問題があるのに、自殺をしてまで問題を増やす必要はない」と言われました。また、先日、うつ病への対処の違いについての学術記事を読みました。ルワンダの大量虐殺の後、アメリカなどが精神的なサポートを届けるためにカウンセラーをルワンダに送ったり、カウンセリングのプロジェクトを立ち上げたりしました。しかしルワンダの人々の反応は予想とは違い、カウンセリングで鬱を治療するのではなくて、知り合いと歌ったり、踊ったりして、みんなで一体となって問題を乗り越えていった、とありました。その記事を読んで、数字だけではなく、価値観や問題に対しての取り組み方の違いも考えないといけないな、と痛感しました。

また、コンゴ民主共和国では最寄りの ヘルスセンターに行くまでに徒歩で7日かかるのも現状です。地図上の距離感では どこも一緒のように見えたりしますが、実際はもちろんそうではない。自分の目や写真で見ないと見えてこないものがあります。ニーズや現状に合わせた支援の必要性を痛感します。

体力、気力が大事

私自身は基本的に楽観的だと思います。コンゴ民主共和国というのは、おそらく国連職員に限らず、外交官やNGO職員など、外から来た人たちにとっても大きくストレスを感じやすい環境だと思います。私はたまたま到着したときに、NETIThe New and Emerging Talent InitiativeUNICEFの若手採用・研修制度)の同期生がいて友人を紹介してもらえたので、溶け込みやすかったというメリットがあったと思います。職種に限らず、国連、特にフィールドで働くには、病気にかかりにくいなど精神的にも肉体的にも強いことが重要だと思います。体力、気力と談笑がなければ、やっていけない時もあります。

次の勤務では、違う大陸に行って仕事をしてみたいです。ネパールに2年いて、今はアフリカにいます。フィールドで仕事をして10年。今度は違う大陸、違う言語で仕事をしたいですね。 

 

 
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