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UNICEF日本人職員インタビュー

 

第13回 ルワンダ事務所 開発コミュニケーション専門官 榮谷明子

© UNICEF/PPD Tokyo
UNICEF東京事務所にて

インタビュー実施日:2015629

東京大学教養学部で文化人類学を学び、外資系の銀行で職務経験を積んだあとアメリカのSchool for International Trainingで異文化コミュニケーションを専攻し、Intercultural Relationsの修士号をとる。卒業後はUNICEFセルビア・モンテネグロ事務所(当時)にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として就任。その後、UNICEFジュネーブ地域事務所で日本の支援による鳥インフルエンザ対策に従事。出産、在セルビア日本国大使館草の根無償外部委嘱員を経て、UNICEFニューヨーク本部勤務。本部勤務中にロンドン大学で公衆衛生学の修士号を取得。現在はUNICEFルワンダ事務所にて、開発コミュニケーション(Communication for Development, C4D)専門官として在籍。

いつからUNICEFの仕事に興味を持ったのですか

一つ目の大学院School for International Trainingに在学中、日本のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)でインターンをしたのですが、その時にJPO制度を知り、大学の先輩にチャレンジしてみたらと励まされたこともあって応募しました。JPOに合格後、フィールド(現地)でのプレゼンスが高い機関で働きたいと思い、UNICEF、国連WFPUNHCRを希望しました。そして、いくつか提示されたポストを検討していく中で、UNICEFの『開発コミュニケーション(Communication for Development, C4D)』という職種を知り、学部で学んだ文化人類学の知識が役に立つことから、「これだ」と思いUNICEFに入りました。

C4Dのお仕事について教えてください

例えば、予防接種のプログラムの中で、保健の担当官はワクチンを調達したり、ワクチンを地方に届けるためのコールドチェーン(ワクチンを輸送中に一定の低温度に保つために必要な保冷庫など)と呼ばれる仕組みづくりなど主に保健省とのやり取りを担当します。これに加えて、ワクチンを届ける先のコミュニティにアプローチするのが私の仕事です。予防接種がどのように子どもたちを病気から守るか、なぜ新しいワクチンが導入されたのか。子どもが何か月の時に予防接種を受ければよいのか。など、子どものお父さんやお母さんをはじめとする保護者にワクチンや予防接種についての知識を分かりやすく伝えます。新しいプロジェクトを展開するときには、このようなユーザーとのコミュニケーションを大切にし信頼関係を築くことでプロジェクトの運営がスムーズになり援助物資を確実に子どもたちに届けることができるようになるのです。UNICEFでは、こうした人々とのコミュニケーションを重視して、C4D担当官を置いているんです。

ルワンダ事務所ではどういったことに取り組んでいますか?

現在取り組んでいる中で一番大きな仕事は、栄養不良の根絶のための事業です。ルワンダでは、2010年の時点で5歳未満の子どもの44%が慢性栄養不良でした。慢性栄養不良がなぜ起こるかというと、一日に食べる食品目が少なくて、ビタミン、ミネラル、たんぱく質などの必要な栄養素がバランスよく摂取できていないからです。急性栄養不良とは違い、慢性栄養不良の子どもたちからは「お腹が空いた」というSOSがでません。そのため、親も子どもが慢性栄養不良であることに気付かないことが多いのです。

そこで、まずはどのように栄養が偏っているのかを把握し、その偏りの原因を洗い出すところから事業が始まります。ルワンダは大きな国ではありませんが、それでも地域差がありますから、栄養不良の原因を調査するのも地域ごとに丁寧に見ていく必要があります。ある地域では作物が育ちにくい地層が原因になっているとか、他の地域では作物は取れるけれど子どもに食べさせる代わりに都市部に換金作物として販売されているなど、栄養が偏ってしまう原因は地域によって異なるのです。

保健省や他部署(この場合は保健や栄養チーム)と連携しながら、Knowledge, Attitude and Practice (KAP) サーベイという調査手法やその他のデータを使って問題を分析し、コミュニケーション戦略や行動計画を立てていきます。中でもC4Dは、コミュニティに入っていって、子どもたち、お父さん、お母さんがどう感じているかなどを把握し、行動変容を促す糸口をみつけることを得意としています。

C4Dにおいて、コミュニティの人々にメッセージをおくるために、どのような人たちと協力関係を結ぶのですか?

コミュニティにメッセージを送る際には、誰が影響力を持っているのかを知り、戦略的にパートナー(協力団体、協力相手)を選びます。ラジオなどのメディアを使うこともありますし、コミュニティの中で働くヘルスワーカー、村長、宗教指導者といった人たちと協力することもあります。昨年の『手洗いの日』のイベントでは、目に見えないばい菌の存在を知ってもらうために劇団ともタイアップしたんですよ。

■栄養失調を撲滅するために必要な五つのことを演劇を通して伝えるために作成したビデオの一場面


栄養不良撲滅を目的とした事業の展開を教えてください。

栄養不良撲滅のための事業においても、戦略的に複数のパートナーと協力関係を構築しています。例えば、ルワンダ人は非常に信仰心の篤い人たちなので、私が着任してから、宗教指導者との関係を強化しました。ムスリム、カトリック、そしてプロテスタントの宗教指導者と協力することで全国の97%の人口にまでメッセージを届けることができるのです。

それにはまず、あらかじめ宗教指導者たちのトレーニングを行い、栄養不良撲滅のメッセージを発信してもらうように要請しておきます。そして、クリスマスシーズンを控えた20141217日に各宗教の最高指導者3人と、ルワンダ国保健省、UNICEFでイベントを開催して、宗教指導者たちとの協力関係を大々的に発表しました。多くのメディアを招いて、ルワンダの子どもたちの栄養不良撲滅という目的のために、宗教者団体が保健省とUNICEFの取り組みに参画したことをアピールしたのです。トップの宗教指導者の方たちの協力を得たことで、彼らの下にいる宗教者たちを通じて多くの村々にメッセージが浸透していきました。

最新の調査結果では、慢性栄養不良の子どもの割合が、国レベルで44%から38%に落ちてきています。コミュニティレベルのモニタリングでも、栄養不良に関する知識や理解は上がってきています。もちろんこれは、一つの事業だけの成果ではなく、保健省やその他の支援団体の様々な取り組みがあってこその結果なのですが、UNICEFがルワンダで果たした役割はとても大きいと思います。

栄養不良撲滅の事業において難しい点はなんですか?

保健省等と協力しながら栄養不良の事業をしていて、なかなか栄養不良から抜け出せない子どもたちや、一回抜け出せたけれどもまた栄養不良になってしまう子どもたちがいることが分かりました。そして、そうした子どもたちの多くが、通常の支援以上のサポートを必要としていることも分かってきました。例えば、親が障がいを持っていて子どもを保健センターに連れて行くことができないとか、アルコール依存症で食糧を買うお金がお酒に使われていたり。こうした子どもたちが栄養不良から抜け出すために、UNICEFとしてさらに何ができるのかを模索しているところです。このような場合には各家庭にメッセージを伝えるだけでなく、行政とコミュニティが手を差し伸べるよう促すことも必要だと感じています。幸いルワンダには、子どもは地域コミュニティ全体で育てるという伝統的な価値観がありますから、受け入れてもらえるのではないかと期待しています。

仕事をしていく中で、一番やりがいや喜びを感じる時を教えてください。

仕事をしていて嬉しいのは、同じ目標にむかって協力してくれる人たちと出会ったときです。私は外国人ですから、いずれはルワンダを去る身。その国の中で問題意識を持っている人たちが必要な知識や仕事のノウハウを身につけ活動を続けていくことが、持続可能な、あるべき援助の姿なのではないかと思っています。ですから、同じ目標に向かって進んでいける現地の人と出会い、一緒に仕事をしている時は元気百倍です。栄養不良撲滅の事業においても、保健省や宗教指導者たちに協力を呼びかけ、同意してもらえた時は、とても心強く思いましたし、嬉しかったですね。

協力関係を構築することが難しい時もあるのではないでしょうか。

いまのところ、協力関係を構築することが難しいと感じることはあまりありません。子どもたちの権利を守るというUNICEFの使命はとても説得力があり、子どものためであれば協力は惜しまないと言ってくれる人がほとんどです。あえてコツを挙げるなら、あせらないことですね。最初に話した時に先方が乗り気でなくても、時をおいてまた話してみたり、違う角度から話してみたりと、相手に伝わるよう工夫をしています。

子育てと仕事の両立について教えてください。

いまUNICEF東京事務所で副代表をしている山口郁子さんが私のお手本です。以前、子どもがまだ小さく、子育てがなかなか大変だった時に彼女が「育児の疲れを仕事で癒し、仕事の疲れを育児で癒してもらうという姿勢で臨めばいい」と教えてくれたんです。『両立』というと仕事も子育ても全力で頑張っていなくてはいけないイメージですが、この言葉を聞いて肩の力が抜けました。ほかにもご自身の体験から的確なアドバイスをくれる先輩がたくさんいて、学ばせてもらえることも、UNICEFの魅力ですね。

UNICEFで働くことの楽しさとは、なんでしょう。

UNICEFでは、上司に言われたことを実行するだけではなくて、自分が専門官として考え、いいと思ったことを提案して進めていかなくてはなりません。そこが難しいところでもあり、やりがいでもあります。ここには自分にしかできない仕事がある。自分がやらなきゃ誰がやるんだという感覚で、もっているものをフルに出しきって仕事をするのはとても充実感があります。だから、4年という限られた時間のなかで自分がどこまでできるのか、成果を出すことに集中できるんですね。


■手洗いを促進する子ども向けポスター(クリックして画像を拡大)


 

 
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