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UNICEF日本人職員インタビュー

 

第10回 ガーナ事務所 教育担当官 濱谷美代

© UNICEF/Ghana/2015/Miyo Hamaya

インタビュー実施日:2015428

 

津田塾大学国際関係学科卒業。イーストアングリア大学大学院(イギリス)教育・開発学修士。在エチオピア日本大使館にて、現地NGOによる教育、医療プロジェクトの支援に関わる。2010NGOに転職し、2013年ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてUNICEFガーナ事務所に派遣、教育担当官として勤務し、現在に至る。

 

UNICEFへの転職 - 政策レベルで影響を与えたい

UNICEFで働き始めるまでには、日本大使館やNGOなどで経験を積みました。まず、大学院で教育・開発学修士号を取得してから、エチオピアの日本大使館で現地NGOによる教育や医療分野のプロジェクト支援をしました。その後、人々への生活の影響を実際に見てみたいと希望し、人々に密着した草の根の活動をするNGOに転職しました。そこではまさに希望していたような仕事をすることができ、ケニアで約2年半、村のお母さんたちに寄り添った活動をしました。

NGOでは村の人たちと一緒にイベントを開催したりなど、貴重な経験を積むことができました。しかし、当然のことながら、村に密着した活動だと、その村の人々しか対象にできません。けれども多くの場合、その隣の村でも支援を必要としている人がいます。そうした実態をみているうちに、政策レベルで影響を与えたいと考えるようになりました。そこで、32歳でJPOの選考に挑戦し、幸いなことに合格することができて、翌年UNICEFガーナ事務所に派遣されました。

教育担当官としての仕事

ガーナは、他の西アフリカ諸国に比べて小学校の就学率が高い国です(世界子供白書2015によると、初等教育の純就学率は男女ともに80%台)。UNICEFガーナ事務所の教育セクターは、残りの10数%の子どもたちに教育の機会を提供することと、全体的な教育の質を向上させることを目的として活動しています。ここで取り残されている子どもたちは、障がいを持っていたり、児童労働に従事しているような子どもたちです。

私はこの目標のもと、学校に通えない子どもたちを対象にした基礎教育プログラムに取り組んでいます。このプログラムは、9か月間を1サイクルとして授業を行うもので、村の一角を使った教室で村の運営により授業が行われます。UNICEFはガーナ政府と協力しながら当プログラムを運営し、現地のNGOが実施を担当しています。ガーナの村々では働いている子どもたちもいるので、そうした子どもたちの時間に合わせてクラスのスケジュールを組みます。9か月の授業が終わった時に子どもたちが公式の学校教育(フォーマル教育)を受けられるようになることを目指しています。ガーナでは、公教育は英語で行われますが、当プログラムの教室では、英語のABCや簡単な計算などを、部族の言葉で教えます。部族語でしっかり英語を習う子どもの方が、その後の学校でもちゃんと授業についていけるということもあるんですよ。

私は、プログラムを実施している現地NGOと一緒に仕事をしていて、進捗状況や資金の使われ方をチェックしたり、先生がいなくなった等の課題の改善方法を教育省やNGOと協議しています。なぜ先生がいなくなってしまうかというと、この教室の先生は無給のボランティアなんですね。途中で来なくなったり、遅刻することが時折起こるので、その対応をしています。

顏を見えるやり取りが大切

JPOに着任したばかりの時、ちょうど上司にあたるポストも入れ替わりの時期で、上司がいない期間が4か月あったんです。そこで、オフィス内にある資料をかき集め、自分の着任前の状況をまとめ、自分がこれから取り組むべき課題を洗い出して、自分の仕事に関する資料を作成しました。その後やってきた上司には、その資料が「分かりやすい」と言ってもらい、仕事を任せてもらえるようになりました。UNICEFでは、積極的に自分で仕事を探し、見つけ、作る姿勢が求められているのだと感じました。

ところが、仕事を任せてもらったのは良いのですが、私の前はガーナ人の現地採用の職員がずっと担当していたプログラムだったので、外国からいきなりやってきたばかりの私が信頼関係を築くのがとにかく大変でした。現地NGOの人たちも、なにかあるたびに前任者にばかり連絡して、私のところに話が来ないということがよくありました。

幸いなことに地方に出張することが多かったので、電話やメールで連絡するだけでなく、NGOの人たちと一緒に地方に出張して「顔が見えるやり取り」を重ねていくことで、1年くらいかけてようやく信頼してもらえるようになりました。とにかく、カウンターパートの人との関係を築くのが大変でした。

困難を乗り越えるコツは、直接顔を見せて仕事をすることと、頻繁に電話をし、フォローアップをすることでしょうか。例えば、NGOの人と電話して出張のスケジュールを立てたら、その内容を携帯メールで文字に起こして記録に残る形で確認し、待ち合わせ場所に来ない時にはまた電話して確認をする、ということを繰り返しました。

私はいつも、外国人である自分の付加価値はなんだろうと考えてきました。その答えの一つは、きめ細やかな作業ができることかなと思っています。制作物を細かくチェックすること、スケジュールを間違えないようにフォローすることなど、きめ細かいことに気付くことができる日本人だからこそ発揮できる付加価値だと思います。

ガーナで夫と出会い、出産を経験して

2013年にJPOでガーナに赴任してからすぐに夫と知り合い、2014年に結婚しました。その後妊娠し、201410月に産休を取って日本に戻ってきて出産しました。UNICEFの出産・育児に関するルールは、20149月に少し変わりました。それまでは妊娠中・出産後を合わせて16週まで有給で休みが取れましたが、今は24週(6か月)まで休みを取ることができます。

妊娠が分かった当初は、仕事がようやく軌道に乗ってきたところだったので、上司や同僚に申し訳ないと思いました。上司に産休を取りたいと相談した時も、「I’m very sorry」と打ち明けたんです。しかし上司は、「おめでとう!なぜ謝るの?産休を取るのはあなたの権利なんだし、子どもができただなんて、とても素晴らしいことよ!」ととても喜んでくれました。同僚もみな同じように心から祝福し、喜んでくれました。UNICEFは本当に女性が働きやすい環境だと思います。日本のマタニティ・ハラスメントなどのニュースを見ていたので、職場全体で妊娠を祝福してくれるUNICEFで働いて良かったと、改めて思いました。

現在子どもは5か月になるのですが、もうすぐガーナに戻って子育てをします。UNICEF事務所では職場の中に託児所を建設中で、私が戻る頃には完成している予定です。事務所と同じ建物内に子どもがいるので、仕事中も母乳で育てられます。UNICEFは世界で完全母乳育児を推奨しているので、職員自身も母乳育児をしながら仕事ができる環境を整えているんです。子どもを近くに見ながら仕事ができるのは安心です。

ガーナに戻ったら、子どもがいるので地方への出張の機会は少なくなると思いますが、また基礎教育プログラムの担当をします。夫も同じ国際開発の仕事でガーナで働いていた日本人で、彼は5月からはガーナで新しい職に就くことが決まっています。幸運なことに、次の一年間は二人とも同じ国で仕事ができるんです。しかし、私のJPOの契約はあと1年ですから、その後お互いのキャリアをどうするのかはまだ分かりません。独身時代はキャリアを優先し、好きなように築いてきましたが、これからは家族を優先しながらキャリアを考えていくことになります。

海外で働きながらの結婚や出産について

学生の頃は、自分のキャリアの事しか考えていませんでした。結婚して、子どもを産むのか、子どもを産んでからも働きたいのか、などといったことは考えていませんでした。しかし、30歳を過ぎたあたりから、私生活との両立を考えるようになりました。けれど、国連職員の仕事を紹介したウェブサイトなどはありましたが、私生活との両立といったことになると、ロールモデルの女の人も知りませんでしたし、この点に関しての情報がなかなかありませんでした。しかし、実際国連で働いてみると、この点についての悩みを抱えている人が多いように感じます。私の周りの国連職員の女性は、様々な形で結婚や子育てをしています。例えば、UNICEFの職員同士で結婚している人もいれば、フリーのカメラマンと結婚している人もいますし、夫とは違う国で別々に暮らしながら子どもは母親が育てているカップルもいます。

国連の仕事は、海外の事務所を数年毎に転々としながらキャリアを形成していくため、結婚や子育てとキャリアの両立は難しいように思えるかもしれません。けれど、日本で仕事をしていたとしても、結婚や子育ての両立に悩んでいる人は大勢いますよね。それに、結婚してもしていなくても、国連で生き残っていくのは大変です。数年毎に新しいポジションに応募して勝ち残り、職場を変えながらキャリアアップをしていかなくてはなりません。そのためには常に自分の力を磨いていかなければいけないですし、周りは強者ばかりです。

けれど、それが楽しいところでもあります。色々な人に出会い、様々なことを知ることができるというポジティブな面でもあるんです。世界の優秀な人たちに囲まれ、共に「子どもと母親のために」という明確なミッションを追いかける ― こんなにワクワクする仕事はそうそうないと思います。挑戦する価値は充分にあるのではないでしょうか。 

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© UNICEF/Ghana/2015/Miyo Hamaya

 

 
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