UNICEF日本人職員

UNICEF日本人職員の講演

UNICEF日本人職員メディア掲載

UNICEF日本人職員インタビュー

 

第8回 ニューヨーク本部 ジュニア教育エコノミスト 畠山勝太

Mr. Hatakeyama1
© UNICEF/Zimbabwe/2013/Hatakeyama
ジンバブエ・ブラワヨ近郊の村にて、町の子どもと一緒に

インタビュー実施日:2015320日(金)

東京大学教育学部卒業後、神戸大学国際協力研究科へ進学し、教育経済学と国際教育開発を学びネパールの教員給与制度について研究。修士課程在学中に短期コンサルタントとして世界銀行本部で勤務を始め、その後ジュニア・プロフェッショナル・アソシエイト(Junior Professional Associate)として世界開発指標(WDI)の出版・教育統計整備・ジェンダーの制度政策評価等に従事。2012年にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてUNICEF (国連児童基金)ジンバブエ事務所に赴任し、教育担当官として教育統計収集・分析支援や数々の教育調査の実施分析に従事。2014年よりUNICEF本部で"ジュニア教育エコノミスト"として教育プログラムの費用対効果分析を行い、より効果的・効率的な教育プログラムになるよう提言を行っています。

 

国際機関で働こうと思ったきっかけ

私が国際機関で働くことになったきっかけは2つあります。1つ目はちょうど私が中学3年の時、同じ岐阜県出身で外交官だった杉原千畝さん [注:1] のことを知って影響を受けました。当時、同級生から「本当の強さは自分の能力を他人のために使えることだ」といわれて感銘を受け、その直後に杉原千畝さんのドラマを見て、私はこれを仕事にしようと思いました。2つ目は父が教員で、父を通じて日本の教育制度を見ていたのですが、社会的・経済的な立場の違いによって子どもたちが受けられる教育レベルが公平ではない事に問題意識をもちました。私の父は同和教育もやっていたのですが、その事も大きく影響していると思います。子どもたちというのはベストな教育を受ける権利があると思うので、不利な状況にある子どもたちに良質な教育を届けることで、教育機会の平等を実現していきたい。今は機会の平等がない世界ですが、生まれた所や皮膚や目の色に関係なく、全ての子どもたちが質の高い教育を受けて、自ら機会をつかんでいける、そういう世界を作りたいと思ってこの道を目指しました。

 

UNICEF本部で公平性に配慮して予算配分に取り組む

UNICEFには中期事業計画(MTSP)とそれがリニューアルされた事業計画(SP)と呼ばれるプログラム指標があります。その指標を使って、UNICEFの教育セクターでの国事務所ごとの支出構造と、教育指標に見られる進捗(教育プログラムの進捗状況や女子の就学率など)の関係を計量経済学の手法を使って分析し、UNICEFがどのようにお金を活用していけばより効率的かつ効果的に子どもたちの教育を良くできるのか検証しています。また、UNICEF本部は地域事務所と国事務所をサポートする役割も果たしているのですが、各国事務所の予算配分が公平になっているかという事もきちんと分析しています。例えば、一人当たりの国内総所得(GNI)が低い国に予算が優先的に配分されているかどうか、また緊急事態の度合いに合わせて予算が公平に配分されているかという事も検証しています。

 

UNICEFジンバブエ事務所で統計分析力を活かす

ジンバブエ初等中等教育省と統計局に対して調査・統計の能力強化を行っていました。現地調査では、UNICEFの国際的な家計調査手法であるMultiple Indicator Cluster Surveys MICS)や、就学率や出席率等のデータを扱うシステムEducation Management Information System EMIS)を使って情報収集を行うので、そうした統計データ収集の支援や研修等を実施するのが主な役割でした。現地で集めたデータを一緒に確認して欠損値があれば次の日再度調査に行ってもらう事もありました。

データの質を上げるためにはやはり念入りな確認が必要になるので、調査期間中の夜は殆ど眠れなかったですね。調査能力強化に関しては研究課題の作成方法から質的・量的データの分析手法まで現地スタッフに研究方法を伝えていました。実際に、「退学と留年の要因に関する調査」や「学力調査に関する調査」を一緒に行いましたが、やはり調査を通じて能力強化を図る事は、教育統計の分析力強化と共に、効果的な教育計画を策定するために非常に重要だと思います。

 

UNICEFの国事務所と本部での違い

1つ目は仕事の役割が違いますね。国事務所は直接子どもの権利条約の実現に向けて動いています。一方、本部だと国事務所と地域事務所のサポートが主な仕事になってきますので、直接子どもの権利を実現することに向けてサポートできるかというと、やはり直接的ではないですね。距離があります。

2つ目はスタッフに求められる資質がかなり違います。国事務所だとマネジメント能力が必要になってくると思います。例えばナショナルスタッフを束ねられるか、他の援助機関との調整を上手くできるか、途上国のオーナーシップを尊重して物事を進められるか等の能力が非常に重要です。一方、本部は国事務所をサポートする役割を負っているので、国事務所のスタッフでは限られている知識と経験が問われることも多く、国事務所をサポートする上で、本部ではより専門性や分析力が求められていると思います。

 

今後の展望

もう少し国際機関の教育分野で色々と経験を積みたいと考えています。しかし、「より不利な環境にある子どもたちにより早期に良質な教育を受けられるようにしたい」と考えているのですが、それを実現するためには今の私はまだまだ勉強が足らないのです。例えば、インパクト評価 [注:2] についてもっと勉強する必要があると思います。更に子どもはどういう時に勉強し、どうすれば学ぶのか等について大人と子どもの行動や脳の発達具合の違いを踏まえて「行動経済学」や「発達神経科学」について博士課程で勉強し、また国際機関に戻って教育開発の仕事に役立てていきたいと思っています。

 

今後UNICEF含む国際機関を目指す方たちへのメッセージ

やりたい事があるならやって下さい。セブン・イヤーズ・イン・チベットという映画で、ダライ・ラマが「自分が死んで100年経った頃には自分の事を誰も覚えていない」と言っていたシーンに感銘を受けたのですが、親や周りを気にしても誰も100年後には覚えていない。だったら人の目を気にしすぎず、やりたい事があるならやった方が良いと思います。

 
**********
[注:1] 第二次世界大戦中のリトアニアで、ナチスの迫害を逃れてきたユダヤ人に対し日本通過ビザを発給し、六千人もの命を救ったといわれている外交官。

 

[注:2] 事業が対象社会にもたらす変化を測定する評価手法

 

Mr. Hatakeyama2
© UNICEF/Zimbabwe/2013/Hatakeyama
ジンバブエにて、子どもの身体検査を実施するため、身長・体重計を持って対象の村に向かっている様子

インタビュー日本人職員トップページへ戻る>>  

 

 
unite for children