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【1月31日】ポリオ根絶活動 最後の一歩

2019131日アフガニスタン発

99.9%

エボラ出血熱やジカ熱など、人々をたびたび脅かす感染症。根絶できたら世界の人々の心配は大きく減ることでしょう。しかし、これまでの人類の歴史上、根絶できた感染症は天然痘ただ一つだけで、なかなかこれに続くものは出ていませんでした。ところがもう少しで、人類が克服できた感染症にポリオが加わるかもしれません。過去30年間に、野生株のポリオ発症件数は99.9%も減っているのです。日本も例外ではありません。日本では、1960年に、ポリオ患者の数が5,000人を超え大流行しましたが、ポリオワクチンの導入によりその数は減少し、1980年の1例を最後に現在まで新たな患者は出ていません。

このポリオ根絶に向けた活動には、子どもを持つ母親から政府、コミュニティのリーダーから国連に至るまで、多くの人々が携わり、世界中でこの感染症への対策が取られてきました。ポリオ根絶は国際保健上の優先課題の一つとなり、まさに世界が一丸となって発症件数ゼロを目指してきたのです。しかし、世界が根絶を意識し始めてから数年が経った今でも、まだ100%の根絶には至っていません。「あと少し」の距離がなかなか埋まらないことに焦りを感じる声も出てきました。一体、なぜここまで来て根絶に時間がかかっているのでしょうか。99.9%と100%の間には何があるのか、世界で3カ国となったポリオ常在国であるアフガニスタンからレポートしたいと思います。

アフガニスタンにおける達成

アフガニスタンは、パキスタンとナイジェリアと共に、世界でたった3カ国となった野生株のポリオ常在国です。2018には同国で21件、パキスタンで12件、ナイジェリアで0件の症例が報告されました。アフガニスタンは2018年、最も多くのポリオ症例数を出したことになります。しかし、症例が出た場所を細かく見ていくと、南部と東部の非常に限られた場所でしか発生していないことがわかります。実は国土の実に96%ではポリオ症例数が0件(2018年)に抑えられているのです。このことから、アフガニスタンでもポリオ根絶に向けた活動が大きな達成を見せていることが分かります。

これほどの成果を達成した背景には、アフガニスタン自身の政治的なコミットメントに加え、日本政府をはじめとする援助国・団体からの長年の支援、そして保健分野で世界最大の官民連携パートナシップである「世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)」の絶え間ない活動があります。GPEIはUNICEF、世界保健機関(WHO)、国際ロータリー、米国疾病対策センター、ビル&メリンダ・ゲイツ財団で構成されており、ポリオ根絶活動の最前線で活動しています。

GPEIを構成する団体の一つに国際ロータリーがあります。日本だけでも342万米ドル以上(2018年度) を支援をしている同団体の、ポリオ撲滅コーディネーターである医師の松本祐二さんは現在の思いを次のように語りました。「国際ロータリーの会員、ロータリアンは世界中でポリオ根絶を目指して活動しています。講演やイベントなどで地域の人たちにポリオ根絶の大切さを伝えたり、日本政府に対し支援を求めるアドボカシー活動も行っています。ロータリーだけで活動するよりも、いくつかの団体が協力したほうが大きな動きになるので、UNICEFやそのほかの団体と啓発活動やアドボカシー活動をすることもあり、今後も力を入れていきたいと思っています。」そして、根絶にまだ至っていないことを指摘し、「講演などでは、本当に終わりになるのかという問いも受けている」と心配する気持ちをのぞかせました。

最も険しい道のり

「アフガニスタンの予防接種普及率の向上には目覚ましいものがあります。UNICEFは、予防接種の状況をリアルタイムで把握し質の向上とともにすべての子どもたちにワクチンを届けるため日々モニタリングを続けています」と、UNICEFアフガニスタン事務所上席予防接種専門官のローレンス・チャビランは言います。

しかし同時に、チャビラン上席予防接種専門官は南部と東部での活動の難しさも指摘しました。いくつかの原因により、予防接種活動が阻まれているのです。1つ目の原因は、保護者のワクチンへの不信感です。保護者の中には、ワクチンは安全でなかったり、イスラム教で禁じられている物質が入っていると誤解し、子どもに予防接種を受けさせることを拒否する人たちがいます。保護者の協力なしに子どもたちへのワクチン接種はできません。2つ目は、ポリオが発生している地域がそもそも社会サービスや支援がなかなか行き届かない地帯であるため、清潔な水や食べ物が足りていない状況で、ワクチンよりもまず清潔な水を持ってきてくれ、という要求が家族から出ることがあります。ワクチン接種は子どもたちの健康にとって重要ですが、水や食べ物が不足している日々を送っている人たちには緊急的な必要性が感じられなくても不思議ではありません。3つ目には、安全上の理由から、家を一軒一軒訪ねて子どもたちを探し出し、ワクチンを接種するキャンペーンができない地域が出てきていることが挙げられます。このキャンペーンはアフガニスタンのような保健所が不足している場所では非常に有効なことが証明されているのですが、2018年5月以降は特に南部でこのキャンペーンが実施できなくなっており、予防接種できない子どもたちの数もそれに伴って増加しています。これがポリオ発症へのリスクを高めています。4つ目には、パキスタンと国境を接する東部アフガニスタンでは、多くの人たちが両国の間を往来しており、両国の間での野生株ポリオの感染が確認されています。ポリオに関するモニタリングや、子どもたちの移動を追いかけるシステムは発展してきているものの、国境をまたいだ多くの人々の往来に対応することは簡単なことではありません。

戦略的対応の実施

21件のポリオ発症件数をゼロにしようと、アフガニスタン公衆衛生省とUNICEFなどパートナー団体は新たな対策に乗り出しました。まず、全国規模のポリオ予防接種キャンペーンの際に7万人以上のフロント・ワーカーが地元コミュニティから雇用され、家々を一軒ずつ訪ねてワクチンを届けます。その際にワクチンを拒否する保護者や家族に対しては、ワクチンの大切さや誤解を解くための説明などを丁寧に行います。また、宗教指導者などコミュニティから信頼されている影響力のある人々にも協力を仰ぎ、ワクチンに対して文字通り扉を開いてもらうように家族とコミュニケーションをしています。また、ワクチンを拒否している家族やその理由などの問題を話し合い組織的に進捗をモニターするための委員会も県レベルと国レベルで立ち上がっています。

また、「ワクチンよりもまず水や食料を」という家族に対応するために、UNICEFでは保健や水と衛生、栄養などのセクターと協力して対応し、ワクチンへの受け入れを促しています。

さらに、家を一軒一軒訪ねるキャンペーン方法ができなくなっている地域については、UNICEFは早急にこのキャンペーンが再開できるように提言を重ねています。また再開までの間は、代替策として人々が集まるモスクのような場所で予防接種を行ったり、はしかのキャンペーンを行うときにポリオのワクチンも接種したり、人々の移動が多い交通の要所にチームを派遣して予防接種をしていない子どもたちに接種を行うなどの方法をとっています。

4つ目として、アフガニスタンとパキスタンの国境をまたいで移動する子どもたちに対しては、両国の間を移動する人たちに対する予防接種ができるようにパキスタン側との連携が強化されています。人々の移動をモニタリングし、国境地帯の要所に予防接種ができる場所を設置しています。15のクロス・ボーダー・チームによって、10万人以上の子どもたちが毎月この方法で予防接種を受けています。

ポリオ根絶が歴史に刻まれる瞬間を

1988年には125カ国で推定35万件の発症件数があったポリオが、2018年に33件にまで99%以上も減少したのは偶然でも奇跡でもありません。世界がポリオ根絶に向けて一丸となって努力したからこそ実現できたのです。発症件数ゼロまであと少し。最後の一歩が最も険しい道のりであることは間違いありませんが、ここで努力をやめるわけにはいきません。国際ロータリーの松本さんは「ここで止めたらまた元の世界に戻ってしまう」と言い、根絶までロータリーとして努力を続けていくと話しました。根絶に向けた手綱を緩めたとたん、強い感染力を持つポリオが瞬く間に世界に広がってしまうことは明白です。毎年20万件の発症件数が世界でみられるようになるという推定もあります。子どもたちをこの感染症から守り、ポリオ根絶を私たちの世代で歴史に刻むことができるように、進捗にぜひご注目ください。そして、UNICEFとパートナー団体をこれからもご支援ください。

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