第80回 アフガニスタン事務所 山本祐一郎

子どもの保護専門官

米国で学士号、英国で修士号を取得。米国の民間企業に就職した後、日本のNGOで国内外での支援活動に従事。国連ボランティアとしてUNICEFシエラレオネ事務所に入職した後、同事務所で職員として勤務。2022年3月から現職。 

アフガニスタンの子どもたちと輪になって会話をする山本さん。
UNICEF Afghanistan/2023 カンダハル県のパキスタンとの国境付近にある「子どもにやさしい空間」で、パキスタンから帰還したアフガニスタンの子どもたちと一緒に。

現在、どのような仕事をしていますか?

UNICEFアフガニスタン事務所で子どもの保護の活動を行っています。アフガニスタンの多くの子どもたちは、生まれた時から紛争に巻き込まれ、暴力や避難、貧困によって、子どもらしく安全に生きる機会を奪われ続けています。UNICEFは、子どもの権利の実現に向けて社会規範や習慣の変容を促す啓発活動、安全に遊び、学び、他の子どもたちと交流できる「子どもにやさしい空間」の設置、家族と離れ離れになってしまった子どもたちの家族との再会支援、子どもや女性に対する暴力や搾取の予防などの活動を行っています。 

私はその中でも、主に子どもの保護システムの構築や、帰還民の子どもの保護を担当しています。2021年8月の政変以降、アフガニスタンの人々の命を支えてきた基本的な社会サービスが停止や縮小に追い込まれました。子どもの保護システムも崩壊してしまい、現在、子どもの保護の政策やモニタリング、データ収集、保護サービス、ケースマネジメントなど、暴力や虐待、搾取の予防と対応を行うためのシステムの建て直しを行っています。事実上の当局と調整しながら、子どもの保護に関する政策や法律などの再構築を行っているのですが、調整は一筋縄ではいかないことが多く、長期的な視点をもって、根気強く対応を行っています。 

また、政変後に女性による人道支援活動が制限されたことにより、子どもの保護の活動を最前線で行うソーシャルワーカーの人数が大幅に減少してしまいました。そのため、UNICEFはソーシャルワーカーを育成して各地に派遣することで、あらゆる地域の子どもたちが子どもの保護サービスにアクセスできるようにしています。アフガニスタンには、保守的な地域もあれば、比較的進歩的な地域もあります。事実上の当局と調整してできる限り女性のソーシャルワーカーを確保しようとしているものの、まだまだその数は少ないと言わざるを得ません。 

国のシステムの構築に加えて、帰還民の子どもたちへの支援も担当しています。アフガニスタンはパキスタンやイランからの帰還民の子どもが多く、国境には、親と離れ離れになって移動する子どもたちが何万人もたどり着きます。私は、国際移住機関(IOM)などと連携して、このような子どもたちを保護し、心理社会的支援や家族の追跡・再会支援を提供する活動を率いています。 

アフガニスタンは長年にわたって紛争や人道危機が続いており、現在も各地で様々な暴力が起こっていますし、洪水や干ばつなどの自然災害に見舞われやすい国でもあります。また、政変後に貧困が悪化してしまったため、現在も緊急支援を続けていますが、徐々に国内の状況が安定してきているため、UNICEFは人道支援から開発支援、平和構築まで切れ目のない支援を行うことで、アフガニスタンの子どもたちの命と未来を守る活動を行っています。 

カンダハル県のパキスタンとの国境付近にて、UNICEF現場事務所のスタッフと写る山本さん。
UNICEF Afghanistan/2024 カンダハル県のパキスタンとの国境付近に出張した際、現場で活動をするUNICEF現場事務所のスタッフと一緒に。

これまでのキャリアについて教えてください。

私は日本国籍なのですが、幼少期からずっと海外で育ってきたので、日本の学校に通ったことがありません。そのため、子どもの頃から、国際的な仕事に就きたいと思っていました。ずっと海外を拠点とした生活を送り、アメリカの大学を卒業後に現地で就職し、その後イギリスの大学院に通いましたが、2011年の東日本大震災をきっかけに日本に帰国して日本のNGOで仕事に就き、東京を拠点にして東北や海外の支援事業に携わりました。その後、同NGOでパキスタンに赴任し、同国に身を寄せるアフガニスタン難民の支援活動に従事しました。その後、外務省の「平和構築人材育成事業」を通じてUNICEFシエラレオネで国連ボランティア(UNV)として1年間働いた後、同事務所で職員になりました。シエラレオネでは5年近くUNICEFで働き、2022年からアフガニスタンで仕事をしています。 

国連ボランティアとしてUNICEFの仕事を始めて職員になられていますが、何か心がけていたことはありますか?

UNICEFを含め、国連の仕事は、すごく優秀な人でも、タイミングが合わなかったりして採用までたどり着けないこともあると思います。私が一番大切にしてきたことは、同僚との信頼関係の構築です。上司や同僚ときちんとコミュニケーションを取って良い関係性を築き、チームに貢献していくことが大切だと思います。私はUNVで子どもの保護の活動を担当していたのですが、教育分野とも活動内容が少し重なっていたので、他の部署の仕事でも自分にできることがあれば手伝ったり、色々なチームの人たちと協力しながら仕事をするようにしていました。 

パキスタンから帰還したアフガニスタンの子どもたちと山本さん。
UNICEF Afghanistan/2023 ナンガルハル県のパキスタンとの国境付近にある「子どもにやさしい空間」で、パキスタンから帰還したアフガニスタンの子どもたちと一緒に。

アフガニスタンは厳しい状況が続いていますが、なぜこの国で働こうと思ったのですか。また、活動にあたって難しいと感じることや、特に印象に残っていることはありますか?

2021年の政変や現地の混乱の様子をニュースで見ていて、まさかその半年後にアフガニスタンに赴任するとは思ってもいませんでした。UNICEFに入職する前にNGOでパキスタンに身を寄せるアフガニスタン難民への支援に携わっていたので、南アジアの国々に親しみもありましたし、アフガニスタン国内での活動にも関心があったので、アフガニスタンでの仕事を志望しました。

私がこれまで働いてきた国での活動との大きな違いは、事実上の当局との調整が非常に難しいことです。事実上の当局であるタリバンは国際的には承認されていませんから、ドナーとのやり取りも難しいです。シエラレオネなどでは、政府と協力しながら活動を進めることができましたが、アフガニスタンでは事実上の当局を通じたサービスの提供を行うことができないので、UNICEFは現地のNGOを通じて支援を提供するなど、様々な方法を模索しながら活動を続けています。 

子どもの保護は、家庭内暴力や虐待、児童婚、児童労働など、最もぜい弱な子どもたちを対象に活動を行うため、本当に悲しい事例をたくさん見てきました。私たちの活動は、ソーシャルワーカーを通じて子どもに向き合い、それぞれの状況に適したケースマネジメントを行って支援を届けることを大切にしています。そのため、それぞれの子どもたちへの感情移入も大きく、出会った一人ひとりの子どもたちの姿が強く印象に残っています。

2021年当初、多くの国の大使館や政府機関がアフガニスタンから撤退してしまい、この国には国連機関しか残りませんでした。UNICEFは、アフガニスタンで半世紀以上にわたって支援活動を続けている数少ない国際機関の一つであり、緊急事態下や国の指導者が変わるなかでも、途切れることなく最前線で子どもたちを守る活動を続けています。特にアフガニスタンにおいて子どもの保護支援を展開できる機関はUNICEFしかなく、「すべての子どものために」という使命のもと、長期にわたる人道危機や複雑な状況下に置かれる子どもたちの命と未来を守るために、絶え間なく支援を行っています。アフガニスタン各地を実際に訪れて、子どもたちが決して経験すべきではない悲惨な状況下で生活する姿を目にすると、やはりUNICEFがこの国で活動する意義は大きく、私たちにしかできない重要な仕事を任されていると感じます。 

イランからの帰還民の若者と遊ぶ山本さん。
UNICEF Afghanistan/2024 ヘラート県のイランとの国境付近にある一時保護施設で、イランからの帰還民の若者と一緒に。

UNICEFの活動に関心のある若い世代へのメッセージをお願いします。

私自身、しっかりとしたキャリアの計画を立てて今の仕事にたどり着いたわけではありませんが、UNICEFで働くための道は決して一つだけではないということをお伝えしたいです。国連で働く日本人の大半がJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)を経験していますが、私はJPO試験に受かりませんでしたし、いろんな失敗や苦い経験もしてきました。私のようにUNVとしてUNICEFで働き始める方もいますし、インターンや空席公募に応募することもできます。様々な方法があるので、幅広い選択肢を考慮に入れるといいと思います。

また、実際に仕事を始めると、チームできちんとコミュニケーションを取りながら仕事をしていく社会人スキルが重要になってきます。技術的な専門知識や能力ももちろん大切なのですが、技術や知識はいつでも学べますし、仕事をしていくなかで身に付けていくこともできます。一方、コミュニケーションの能力はすぐに身に着くわけではなく、日々の積み重ねが大切だと思いますので、学生の頃や社会で仕事をしていく上で意識的に学んでいくことをお勧めします。UNICEFでは色々な人種や国籍、背景を持つ同僚と仕事をしますし、現地政府とも協力して活動を行います。そのため、先入観を持たずに周囲の意見に耳を傾けながら、自信をもってコミュニケーションを取る力が大切だと思います。